建設業法で、建設工事の請負契約の当事者は、所定の16事項を記載した書面（契約書）を作成し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないことになっています。書面による契約書の例外は電子契約の場合を除き一切認められていません。たとえ少額な工事であっても書面による契約書の作成が必要です。契約の追加又は一部変更の場合も同様です。

１．書面による契約書が建設業者にとっても必要な理由

　建設業法が請負契約を書面により締結することを求めているのは、発注者保護が目的です。しかし、建設工事を請負う建設業者にとっても、契約を書面で締結する意義は大きいと考えられます。
　建設工事はオーダーメイドが基本であり、一つとして同じ工事はありません。実際のところやってみなければ分らないことも多く、工事の受注を優先して「安く見積もってしまった」場合などにかぎって追加工事が発生し、発注者との間で「言った言わない」のトラブルに発展することもしばしばです。
　そのようなトラブルを回避するためにも、発注者に対して丁寧な事前の説明に心がけることはもちろん、工事計画の詳細や不測の事態の対応方法などについても可能な限り細かく取り決め都度記録に残しておくようにしたいものです。また、契約書面には建設業法で定められた16の事項を中心にできるだけ具体的に記載しておくことが重要です。

２．契約書に記載が必要な事項

　建設工事の請負契約に記載が必要な事項は以下のとおりです。なお、「⑯国土交通省令で定める事項」については、2021年9月現在、該当する規定はありません。（建設業法第19条第1項①～⑯）

①	工事内容
②	請負代金の額
③	工事着手の時期及び工事完成の時期
④	工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
⑤	請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑥	当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
⑦	天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
⑧	価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑨	工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑩	注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
⑪	注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑫	工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑬	工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑭	各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
⑮	契約に関する紛争の解決方法
⑯	その他国土交通省令で定める事項

建設リサイクル法の対象工事の場合は、次の4項目も記載が必要です。

①	分別解体の方法
②	解体工事に要する費用
③	再資源化するための施設の名称・所在地
④	再資源化等に要する費用

２．書面交付の方法について

　書面交付の方法は、以下のとおりです。なお、契約書面に見積書や請負代金内訳書を綴じ込むケースを見かけることがありますが、問題が生じかねないのでお勧めできません。（見積書や請負代金内訳書の個々の記載そのものに法的拘束力を持たせてしまうことになり、受注者はその内容どおりに工事を実施する義務を負うことになってしまいます。）

国土交通省 関東地方整備局 建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 （令和3.3版） 建政部 建設産業第一課　より引用

• パターン１・・・請負契約書を相互交付する方法
  請負契約書に①～⑯を記載する。
• パターン２・・・基本契約書を交わし、注文書・請書を相互交付する方法
  基本契約書に④～⑭を記載する。
  注文書・請書にそれぞれ①～③を記載する。
• パターン３・・・注文書・請書の相互交付のみによる方法
  注文書・請書のそれぞれに①～⑯を記載する。　or
  注文書・請書のそれぞれに①～③を記載し、④～⑯を記載した標準約款を添付する。

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