建設業
経審/入札参加
経審のP点(総合評定値)算出の仕組みについて
投稿日 2021年11月7日 最終更新日 2022年9月23日
公共工事を受注するために、建設業者が必ず受けなければならないのが経審(経営事項審査)です。経審は各建設業者の業種ごとに行われ、その評価項目は大きく「経営状況」と「経営規模等」の2つに分かれます。これらを基に算出された数値がP点(経審の総合評定値)です。P点は業種ごとに建設業者に付与された「持ち点」であり、審査機関(建設業の許可行政庁=国や都道府県)は、このP点に独自の客観評価を加え各建設業者を業種ごとに格付けします。受注できる工事の規模は、その格付によってランク分けされることになります。
1.「経営状況(Y)」の評価項目
経営状況の評価(Y点)は、国交省の定めた審査基準にもとづき、国交省の登録分析機関が行ないます。Y点は、以下の8つの指標(x1~x8)により計算されます。
- 負債抵抗力
【x1】純支払利息比率
(支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100(上限値5.1%、下限値-0.3%)
※建設業者の有利子負債の状況を支払利息の観点か らみた比率。小さいほど良い。
【x2】負債回転期間
(流動負債+固定負債)÷売上高÷12(上限値18.0か月、下限値0.9か月)
※会社にとって返済等の必要がある経済的負担等が、 月商(1ヶ月当たりの平均売上高)に対しどれだけあるかを示す比率。小さいほど良い。 - 収益性・効率性
【x3】総資本売上総利益率
売上総利益÷負債純資産合計(2期平均)×100(上限値63.6%、下限値6.5%)
※総資本(負債純資産合計)に対する売上総利益の割合で、投資効率を企業のもっとも基本的な利益である売上総利益からみた指標。高いほど良い。
【x4】売上高経常利益率
経常利益÷売上高×100(上限値5.1%、下限値-8.5%)
※売上高に対する企業の経常的な活動からの利益(経 常利益)の比率。財務活動なども含めた通常の企業活動における利益率。高いほどよい。 - 財務健全性
【x5】自己資本対固定資産比率
純資産合計÷固定資産合計×100(上限値350.0%、下限値-76.5%)
※固定資産比率の逆数をとった比率で、設備投資など 固定資産がどの程度自己資本(純資産)で調達されているかをみる。逆数をとっているので高いほど良い。
【x6】自己資本比率
純資産合計÷負債純資産合計×100 (上限値68.5%、下限値-68.6%)
※総資本(負債純資産合計)に対し、自己資本(純資産)の占める割合をみるもので、資本蓄積の度合いを 示す比率。高いほど良い。 - 絶対的力量
【x7】営業キャッシュフロー
営業キャッシュフロー(2期平均)÷1億円(上限値15億円、下限値-10.0億円)
※営業活動で得られた資金が、どれだけ増加したかをみる指標。高いほど良い。
【x8】利益剰余金
利益剰余金÷1億円(上限値100億円、下限値-3億円)
※ 会社設立以来の損益の蓄積の度合いをみる指標で、高いほど良い。
- 経営状況点数(A)の計算
A=-0.4650×(x1)-0.0508×(x2)+0.0264×(x3)+0.0277×(x4)+0.0011×(x5)+0.0089×(x6)+0.0818×(x7)+0.0172×(x8)+0.1906 - 経営状況評点(Y)の計算
Y=167.3×A(経営状況点数)+583
Y点の配点は、1,595~0点。総合評定値に占めるウエイトは20%(P点換算後319~0点)です。
2.「経営規模等(Ⅹ1、Ⅹ2、Z、W)」の評価項目
経営規模等の評価は、審査機関(国や都道府県)に対し、「経営規模等評価結果通知書の発行申請」を提出することによって申請します。
経営規模等は、以下の4つ(Ⅹ1、Ⅹ2、Z、W)に区分され、それぞれの審査項目ごとに評点が算出されることになります。
- 完成工事高(Ⅹ1)
Ⅹ1(工事種類別完成工事高)は審査を受ける許可業種ごとに算出します。審査基準日の直前2年または3年の平均完成工事高(税抜き)のうち、いずれかを選択することができます(工事の種類ごとに2年平均、3年平均の使い分けは不可)。
また、工事種類別完成工事高(完成工事基準)に代えて未完成の工事を出来高に応じて計上する方法(工事進行基準)や、審査を受ける業種に関連する審査を受けない業種を完成工事高に積上げて申請する方法(積上げ計算)などの特例も認められています。
評点は、自社の工事種類別完成工事高を評点テーブルに当てはめて算出します。Ⅹ1の配点は2,309~397点。総合評定値に占めるウエイトは25%(P点換算後577~99点)です。 - 自己資本額および平均利益額(Ⅹ2)
Ⅹ2の自己資本額は、貸借対照表の純資産合計を評点テーブルに当てはめて算出します。単年度の自己資本額に代えて直前2年平均の純資産額で算出することも認められています。
Ⅹ2の平均利益額は、損益計算書の営業利益に減価償却費を足し戻した額の2年平均を評点テーブルに当てはめて算出します。
Ⅹ2の自己資本額の配点は2,114~361点。Ⅹ2の平均利益額の配点は2,447~547点。
総合評定値に占めるウエイトは15%です。(P点換算後342~68点)
上記2つの評点を次の算出式で計算して得た数値がⅩ2の評点となります。
Ⅹ2=(自己資本額評点+平均利益額評点)÷2 - 技術職員数および元請完成工事高(Z)
技術職員数の評価対象となる職員は、①審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があること②審査基準日現在、常勤性の要件を備えていることの双方を満たす必要があります。
技術職員数の評価は、「技術職員資格区分コード表」に基づき資格区分ごとの付与点数を集計し、集計値を「技術職員評点の算出式」に当てはめて算出します。(1人で多数の資格を保有する技術職員であっても、加点カウントできる業種は2業種までです。)
【技術職員の資格区分によって付与される点数】
資格の種類 | 付与点数 |
1級技術者で監理技術者講習修了者 | 6 |
上記以外の1級技術者 | 5 |
1級技士補(監理技術者補佐) | 4 |
登録基幹技能者講習終了者、建設キャリアアップレベル4 | 3 |
2級技術者、建設キャリアアップレベル3 | 2 |
その他の技術者(10年以上の実務経験者等) | 1 |
元請完成工事高(工事種類別元請完成工事高)は、公共工事の元請人としてのマネジメント能力を評価する評価項目です。選択する工事の種類と2年平均か3年平均かの選択は、自動的にⅩ1の選択と同一になります。
評点は、自社の工事種類別元請完成工事高を評点テーブルに当てはめて算出します。
Zの上記2つの評点を次の算出式に当てはめて、Z全体の評点を算出します。
Zの配点は2,441~456点。総合評定値に占めるウエイトは25%(P点換算後610~114点)です。
Z=(技術職員数評点)×0.8+(元請完成工事高評点)×0.2
- その他の審査項目(社会性等)(W)
Wは、建設業者に求められる社会的責任について評価する項目です。
「労働福祉の状況」と「法令遵守の状況」の項目は、減点もありうる評価項目となっています。雇用保険・健康保険・厚生年金保険の未加入(法改正により、2020年10月以降は、3つの保険への加入が建設業許可の要件となりました。)、指示処分・営業停止処分などは致命的な減点となりうるので注意が必要です。
また、「知識および技術または技能の向上に関する取り組みの状況」は、法改正で新たに盛り込まれた項目です。技術者のCPDの単位取得数や技能者の建設キャリアアップでのレベルアップが評価されます。
Wの配点は、2,061~△1,995点。総合評定値に占めるウエイトは15%(P点換算後294~△284点)です。
W=(w1+w2+w3+w4+w5+w6+w7+w8+w9+w10)×0.95
評価項目 | 配点 | P点換算後 |
労働福祉の状況(w1) | 450~△1,200 | 64~△171 |
建設業の営業継続の状況(w2) | 600~△600 | 86~△86 |
防災活動への貢献の状況(w3) | 200 | 28 |
法令遵守の状況(w4) | 0~△300 | 0~△43 |
建設業の経理の状況(w5) | 300~0 | 43~0 |
研究開発の状況(w6) | 250~0 | 36 |
建設機械の保有状況(w7) | 150~0 | 21 |
国際標準化機構が定めた規格による登録の状況(w8) | 100~0 | 14~0 |
若年の技術者および技能労働者の育成および確保の状況(w9) | 20~0 | 2 |
知識および技術または技能の向上に関する取り組みの状況(w10) | 100~0 | 14~0 |
3.P点(総合評定値)の算出
経営規模等の評点と経営状況の評点に一定の係数を乗じて得た数値がP点(総合評点値)です。P点を得るためには、審査機関に対し、前記「経営規模等評価結果通知書の発行申請」をするのと同じタイミングで、「総合評定値請求書」で申請をする必要があります。
P=Ⅹ1×0.25+Ⅹ2×0.15+Y×0.2+Z×0.25+W×0.15
(最高点2,158点、最低点△18点)