建設業
経審/入札参加
Ⅹ1(工事種類別年間平均完成工事高)の評点アップ対策
投稿日 2021年12月5日 最終更新日 2022年9月23日
Ⅹ1は、建設業者の施工能力を売上(完成工事高)の大きさで評価する指標です。総合評定値(P点)の全ての評価項目の中でZ点(技術職員数および元請完成工事高)と並び最も高い配点(25%)となっています。
配点が高いとはいえ、売上をとることを優先し、利益が後回しになってしまうと(ふたを開けてみると赤字工事なっていた!など)、Y点(総資本売上総利益率や売上高経常利益率)にマイナスの影響を及ぼします。
Ⅹ1は、審査を受ける許可業種ごとに算出しますが、審査基準日の直前2年または3年の平均完成工事高(税抜き)のうち自社に有利な方を選択することができます(ただし、工事の種類ごとに2年または3年の使い分けはできません。また、Zの元請完成工事高についてもⅩ1で選択した業種と同一になります。)
Ⅹ1は、完成工事基準(年度内に完成した工事高のみ計上)が基本ですが、工事進行基準(未完成の工事を出来高に応じて計上する方法)を選択することもできます。さらに、審査を受ける業種に、それと関連する審査を受けない業種の完成工事高を振替えて申請する方法(完成工事高の振替)も認められています。
1.Ⅹ1の概要と算出方法
評点は、自社の工事種類別年間平均完成工事高を評点テーブルにあてはめて算出します。Ⅹ1の評点テーブルは、1,000万円未満から1,000億円以上までの42区分に分かれており、完成工事高が少額になるほどピッチが狭くなっており、中小事業者でも目に見える形で評点アップを達成することができるよう工夫されています。
- Ⅹ1テーブル
大阪府住宅まちづくり部建築振興課「経営事項審査申請の手引き」からの引用
2.Ⅹ1の評点アップ対策
Ⅹ1の評点アップ対策は、単に売上のみを追求することなく、同時に、利益も確保できるような営業や対策をどう展開するかがポイントです。
- 売上を下請工事から元請工事へシフト
- 自社の強みを生かした営業(専門分野への特化など)
- 精度の高い値決め(積算見積もりの精度向上など)
- 優秀な人材の確保(ブラック企業からの脱却、福利厚生、社員のキャリアアップ推進など)
- 業務のデジタル化、ICT技術の導入など
対策のどれ一つとっても一朝一夕では実現できるものはありません。会社の方針(目標)を明確にして地道に取り組む必要があります。
なお、決算書の中には完成工事高に計上できるものが計上されていない(兼業売上高に計上されていた)ことがあります。決算書の精査も必要です。さらに、完成工事高をかさ上げできる場合が制度上認められてますので、3.以下に述べます。
3.完成工事高の振替(算入)
審査を受ける業種に、それと関連する審査を受けない業種の完成工事高を振替えて申請することができる特例を完成工事高の振替(算入、積上げ)といいます。振替計算ができる業種の関係は以下のとおりですが、審査庁によって判断が異なる場合があるので、申請する審査庁に確認をしておく必要があります。(以下は、国土交通省近畿地方整備局の場合)
- 一式工事に専門工事の完成工事高を振替える場合
振替先の一式工事 | 振替元の専門工事 | |
土木一式工事 | ← | とび・土工・コンクリート、石、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、鉄筋、舗装、しゅんせつ、水道施設、解体工事など |
建築一式工事 | ← | 大工、左官、とび・土工・コンクリート、屋根、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、建具、解体工事など |
- 専門工事間で完成工事高を振替える場合
とび・土工・コンクリート | ⇄ | 石、造園、解体 |
電気 | ⇄ | 電気通信、消防施設 |
管 | ⇄ | 熱絶縁、水道施設、消防施設 |
塗装・屋根 | ⇄ | 防水 |
- 分割分類による他の工事業への振替
振替(算入)が可能かどうかは、事前に審査庁に確認してください。
4.工事完成基準と工事進行基準について
期末未成工事は、一般的に工事完成基準を採用するため工事が完成するまで完成工事高を当期に計上することができませんが、工事進行基準を採用すれば当期の完成工事高を合法的に増加させることができます。ただ、長期的に見れば、当期の増加分は次期で清算されることになるため、特別な売上が計上できるというわけではありません。さらに、この基準を採用する場合は複雑な経理処理が必要となるため、小規模事業者にとってはあまりメリットがないと思われます。
- 工事完成基準
工事完成基準とは、工事が完成し引渡が終了した段階で初めて、工事収益と工事原価を確定させる会計の方法です。 - 工事進行基準
工事進行基準とは、工事の進捗度合いに応じて、工事収益と工事原価を当期の期間損益に反映させる会計の方法です。ただし、この会計基準が採用できるのは、「成果の確実性が認められる場合」に限られます。
(以下①~③をすべて満たす場合です)
①工事収益(工事代金)の総額が確定していること
②工事原価については、「決算時の測定が確実であること」及び「合理的に見積もられていること」
③決算日における工事の「進捗度を測定する方法が合理的な方法で行われていること」