建設業
経審/入札参加
W(その他の審査項目(社会性等))の評点アップ対策
Wは、建設業者が企業の社会的責任(CSR)を適切に果たしているかどうかを評価する指標です。社会的責任の果たし方によっては、評点に大きな差がつくように設計されており、例えば社会保険未加入、民事再生法または会社更生法の適用、営業停止処分や指示処分を受けた場合などは減点評価の対象になります。一方で防災活動への貢献の状況や経理のコンプライアンスに取り組んだ場合には加点対象となります。
Wは、以下の10の指標(W1~W10)の合計点×0.95 で評価されます。総合評定値(P点)における配点は15%です。
Wは、量ではなく質的な面を評価する指標であり短期的に対応できる項目も多く、中小事業者にも取組みやすい評価項目と言えます。
目次
10.知識および技術または技能の向上に関する取組の状況(W10)
1.労働福祉の状況(W1)について
W1の点数は、制度への加入の有無により以下の表で算出します。
- 労働福祉の状況の点数表(W1テーブル)
審査項目 | 有・無 | 点数 |
雇用保険の加入※ | 無 | △400 |
健康保険の加入※ | 無 | △400 |
厚生年金保険の加入※ | 無 | △400 |
建設業退職金共済制度の加入 | 有 | 150 |
退職一時金制度・企業年金制度の導入 | 有 | 150 |
法定外労働災害補償制度の加入 | 有 | 150 |
※「有(加入)」の場合または適用除外の場合は0点。
なお、雇用保険は、法人個人を問わず労働者を1人でも雇用している場合は加入義務があります。ただし、役員のみで構成されている会社や「一人親方」の場合は適用除外となり減点の対象にはなりません。
また、健康保険および厚生年金保険は、法人(従業員の有無を問わない)と常時雇用する従業員が5人以上の個人事業主に加入義務があります。加入義務があるのに加入していない場合は減点の対象です。
- W1の評点アップ対策
減点項目(社会保険=雇用保険、健康保険、厚生年金)未加入の場合は、必ず加入します。法改正により、2020年10月以降は、社会保険の加入が建設業許可の要件となったので、今後は建設業許可の更新すらできなくなります。
加点項目(点数表で「有」の場合に加点される審査項目)については、簡易に評点アップが狙える項目ですので、無理のない範囲で加入を検討してください。
2.建設業の営業継続の状況(W2)
W2の点数は、建設業の許可を受けたときから起算した審査基準日までの年数(1年未満は切り捨て)を以下の点数表に当てはめて算出します(営業停止期間は算入不可)。
民事再生法または会社更生法の適用を受けた場合は、再生期間終了後に営業年数の評価が0点にリセットされ、その時点から新たに営業年数をカウントすることになります。
- W2(建設業の営業継続の状況)
W2=W21+W22
営業年数の点数表(W21テーブル)
営業年数 | 点数 | 営業年数 | 点数 | 営業年数 | 点数 |
35年以上 | 600 | 24年以上 | 380 | 13年以上 | 160 |
34年 | 580 | 23年 | 360 | 12年 | 140 |
33年 | 560 | 22年 | 340 | 11年 | 120 |
32年 | 540 | 21年 | 320 | 10年 | 100 |
31年 | 520 | 20年 | 300 | 9年 | 80 |
30年 | 500 | 19年 | 280 | 8年 | 60 |
29年 | 480 | 18年 | 260 | 7年 | 40 |
28年 | 460 | 17年 | 240 | 6年 | 20 |
27年 | 440 | 16年 | 220 | 5年以下 | 0 |
26年 | 420 | 15年 | 200 | ||
25年 | 400 | 14年 | 180 |
民事再生法または会社更生法の適用の有無の点数表(W22テーブル)
適用の有無 | 点数 |
無 | 0 |
有 | △600 |
※再生期間中(再生手続又は更生手続き中)は、上の表のとおり減点されます。
- W2の評点アップ対策
W2は、建設業許可を取得する前に営業していた期間や、営業停止処分を受けた期間、許可切れの期間は算入できないことを念頭に、着実に営業年数を積上げていくほか対策はありません。
なお、以下のような場合でも、一定の要件のもとで、営業年数や完成工事高を通算できるので、制度をうまく活用し営業年数が途切れないようにしてください。
〇有限会社から株式会社へ(通算可)
〇個人事業の承継、法人成り、合併・事業譲渡など(一定の要件のもとで通算可)
【参考】国土交通省「合併、譲渡等における許可申請及び 経営事項審査について」
3.防災活動への貢献の状況(W3)について
防災協定とは、建設業者が災害発生時に防災活動(人的・物的支援)をする旨を国や地方公共団体と締結する協定のことをいいます。防災協定は、建設業者団体などを経由した者でも認められますが、当該建設業者が防災活動に一定の役割を果たすことが確認できる内容であることが求められます。
W3の点数は、以下の表の区分に応じて算出します。
- 防災協定締結の有無の点数表(W3テーブル)
防災協定締結の有無 | 点数 |
有 | 200 |
無 | 0 |
- W3の評点アップ対策
地元の行政庁と直接「防災協定」を締結する。
防災協定を締結している建設業者団体等に加入する。
4.法令遵守の状況(W4)
審査対象の年度内に、建設業法に違反し指示処分や営業停止処分を受けると減点評価を受けることになります。なお、「国土交通省ネガティブ情報検索サイト」で建設業者の処分情報が誰でも検索できるようになっています。
W4の点数は、以下の表の区分に応じて算出します。
- 法令遵守の状況の点数表(W4テーブル)
法令遵守の状況 | 点数 |
無 | 0 |
指示処分を受けた場合 | △150 |
営業の全部または一部の停止処分を受けた場合 | △300 |
5.建設業の経理の状況(W5)
W5は、経理面でのコンプライアンスの取組み(チェックの体制)について、「監査の受審状況」と「公認会計士等の数」で評価する項目です。W5の点数は、「監査の受審状況」と「公認会計士等の数」のそれぞれを以下の点数表にあてはめその合計点で算出します。
- W5(建設業の経理の状況)W5=W51+W52
監査の受審状況の点数表(W51テーブル)
監査の受審状況 | 点数 |
会計監査人の設置 | 200 |
会計参与の設置 | 100 |
経理処理の適正を確認した旨の書類の提出 | 20 |
無 | 0 |
「会計監査人の設置」で加点を受けるには、会計監査人が財務諸表に対して、「無限定適正意見」または「限定付適正意見」を表明している必要があります。
「経理処理の適正を確認した旨の書類」とは、社内の経理責任者が、国土交通省の「建設業の経理が適正に行われたことに係る確認項目」を基準として自主監査を実施した後に、作成する文書のことを言います。自主監査できる資格者等の範囲は、以下のとおりであり、国土交通大臣が指定する研修等を受講した者でなければなりません。。
①登録公認会計士 ②登録税理士 ③登録1級建設業経理士
公認会計士等の数の点数表(W52テーブル)
※公認会計士等数値については、以下の点数表に当てはめて算出します。
公認会計士等数値=(自主監査できる資格者等の数×1)+(登録経理講習を受講した2級建設業経理士の数×0.4)
年間平均完成工事高 ↓ / 点数→ | 100 | 80 | 60 | 40 | 20 | 0 |
600億円以上 | 13.6 以上 | 13.6 未満 10.8 以上 | 10.8 未満 7.2 以上 | 7.2 未満 5.2 以上 | 5.2 未満 2.8 以上 | 2.8 未満 |
600億円未満 150億円上 | 8.8 以上 | 8.8 未満 6.8 以上 | 6.8 未満 4.8 以上 | 4.8 未満 2.8 以上 | 2.8 未満 1.6 以上 | 1.6 未満 |
150億円未満 40億円以上 | 4.4 以上 | 4.4 未満 3.2 以上 | 3.2 未満 2.4 以上 | 2.4 未満 1.2 以上 | 1.2 未満 0.8 以上 | 0.8 未満 |
40億円未満 10億円以上 | 2.4 以上 | 2.4 未満 1.6 以上 | 1.6 未満 1.2 以上 | 1.2 未満 0.8 以上 | 0.8 未満 0.4 以上 | 0.4 未満 |
10億円未満 1億円以上 | 1.2 以上 | 1.2 未満 0.8 以上 | 0.8 未満 0.4 以上 | ー | ー | 0 |
1億円未満 | 0.4 以上 | ー | ー | ー | ー | 0 |
- W5の評点アップ対策
登録建設業経理士1級・2級の資格取得を目指す。
中規模以上の会社は、会計監査人制度を導入する。
6.研究開発の状況(W6)
W6は、会計監査人設置会社のみが評価の対象となります。W6の点数は、研究開発費の2年平均(審査対象年および前年)の額を以下の点数表にあてはめて算出します。
なお、経審で加点を受けるには、会計監査人が財務諸表に対して、「無限定適正意見」または「限定付適正意見」を表明している必要があります。
さらに、経審での確認は、会計監査人が記名押印した会計監査報告書と建設業法様式の財務諸表「注記表(第17号の2)」によって行なわれるので記載漏れに注意が必要です。
- 研究開発の状況(W6テーブル)
平均研究開発費の額 | 点数 | 平均研究開発費の額 | 点数 |
100 億円以上 | 250 | 11 億円以上 12 億円未満 | 120 |
75 億円以上 100 億円未満 | 240 | 10 億円以上 11 億円未満 | 110 |
50 億円以上 75 億円未満 | 230 | 9 億円以上 10 億円未満 | 100 |
30 億円以上 50 億円未満 | 220 | 8 億円以上 9 億円未満 | 90 |
20 億円以上 30 億円未満 | 210 | 7 億円以上 8 億円未満 | 80 |
19 億円以上 20 億円未満 | 200 | 6 億円以上 7 億円未満 | 70 |
18 億円以上 19 億円未満 | 190 | 5 億円以上 6 億円未満 | 60 |
17 億円以上 18 億円未満 | 180 | 4 億円以上 5 億円未満 | 50 |
16 億円以上 17 億円未満 | 170 | 3 億円以上 4 億円未満 | 40 |
15 億円以上 16 億円未満 | 160 | 2 億円以上 3 億円未満 | 30 |
14 億円以上 15 億円未満 | 150 | 1 億円以上 2 億円未満 | 20 |
13 億円以上 14 億円未満 | 140 | 5,000 万円以上 1 億円未満 | 10 |
12 億円以上 13 億円未満 | 130 | 5,000 万円未満 | 0 |
7.建設機械の保有状況(W7)
W7は、建設機械を自ら保有している場合、または審査基準日から1年7か月以上の使用期間が定められているリース建設機械を保有している場合に加点評価の対象になります。
W7の点数は、評価対象となる建設機械の台数を評点テーブルに当てはめて算出します。
【評価対象となる建設機械について】
名称 | 範囲・基準 |
ショベル系掘削機 | ショベル、バックホウ、ドラグライン、クラムシェル、クレーン又はパイルドライバーのアタッチメントを有するもの |
ブルドーザー | 自重が3トン以上のもの |
トラクターショベル | バケット容量が0.4立方メートル以上のもの |
移動式クレーン | つり上げ荷重3トン以上のもの |
大型ダンプ車 | 車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上で事業の種類として建設業(営業用含む)を届け出、表示番号の指定を受けているもの |
モーターグレーダー | 自重が5トン以上 |
- 建設機械の保有状況(W7テーブル)
建設機械の所有及びリース台数 | 点数 | 建設機械の所有及びリース台数 | 点数 |
15台以上 | 150 | 7台 | 110 |
14台 | 150 | 6台 | 100 |
13台 | 140 | 5台 | 90 |
12台 | 140 | 4台 | 80 |
11台 | 130 | 3台 | 70 |
10台 | 130 | 2台 | 60 |
9台 | 120 | 1台 | 50 |
8台 | 120 | 保有なし | 0 |
- W6の評点アップ対策
1台でも50点の評価となる、保有台数が少なくても効果的な加点が臨めることなどから、喫緊の必要性がなくても若干でもメリットが見いだせるのであれば、中古やリースでの小型機械(ミニショベルなど)の導入もあり得ると思われます。
8.国際標準化機構が定めた規格による登録の状況(W8)
W8は、ISО9001、ISО14001の登録を受けている場合に加点されます。ただし、この評価は認証範囲が建設業全体である場合においてのみ評価され、認証範囲に建設業が含まれていない場合や認証範囲が一部の支店等に限られている場合には加点対象となりません。
W8の点数は、以下の区分に応じて算出します。
- 国際標準化機構が定めた規格による登録の状況(W8テーブル)
国際標準化機構が定めた規格による登録の状況 | 点数 |
ISО9001およびISО14001の登録 | 100 |
ISО9001の登録 | 50 |
ISО14001の登録 | 50 |
無 | 0 |
9.若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況(W9)
W9は、審査基準日における若年技術者(35才未満)の継続雇用と新規雇用について加点評価する項目です。
W9の点数は、建設業者が提出する技術職員名簿に基づき以下の点数表にあてはめて算出します。
- 若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況(W9テーブル)
若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況 | 点数 |
技術職員名簿に記載35歳未満の技術職員数が技術職員名簿全体の15%以上の場合 | 10 |
新たに技術職員名簿に記載された35歳未満の技術職員数が技術職員名簿全体の1%以上の場合 | 10 |
- W9の評点アップ対策
若年の技術者・技能者を雇用する。
10.知識および技術または技能の向上に関する取組の状況(W10)
W10は、雇用する技術者・技能者の知識・技術・技能の向上に努めている企業を加点評価の対象としています。個々の企業では、技術者と技能者の割合はさまざまであるため、技術者と技能者の比率に応じた技術者点と技能者点を合算して算定します。
技術者点は、学会・業界団体において認定されているCPDプログラム(技術者向けの再教育プログラム)を受講した者に与えらます。技能者点については、建設キャリアアップシステム(CCUS)に蓄積された就業履歴や保有資格を活用して評価されます。
※ここでいう技術者(様式第4号の技術者)とは、①監理技術者になる資格を有するもの ②主任技術者になる資格を有するもの ③1級技士補 ④2級技士補を指します。
- W10(知識および技術または技能の向上に関する取組の状況)
W10={技術者数/(技術者数+技能者数)×W101}
+{技能者数/(技術者数+技能者数)×W102}
技術者1人当たりのCPD取得単位数(W101テーブル)
W101=審査基準日前1年間に取得した単位総数(1人当たり上限30単位)※/審査基準日現在の在籍技術者総数
技術者1人当たりのCPD取得単位数 | 数値 |
30 | 10 |
27以上 30未満 | 9 |
24以上 27未満 | 8 |
21以上 24未満 | 7 |
18以上 21未満 | 6 |
15以上 18未満 | 5 |
12以上 15未満 | 4 |
9以上 12未満 | 3 |
6以上 9未満 | 2 |
3以上 6未満 | 1 |
3未満 | 0 |
※CPDは複数の団体が実施しているため、単位の取得に要する時間や難易度にバラつきがあります。そのため、技術者が審査基準日前1年間に取得したCPDの単位数を、「告示別表第18」で実施団体ごとに示された数値(換算係数)で除し30を乗じた数値の合計数を上記のW101に当てはめる取得単位数とします。
【換算計算式】
換算後の取得単位数=取得単位数/告示別表第18の数値×30
告示別表第18
(公社)空気調和・衛生工学会 | 50 | (公社)日本建築士会連合会 | 12 |
(一財)建設業振興基金 | 12 | (公社)日本造園学会 | 50 |
(一社)建設コンサルタンツ協会 | 50 | (公社)日本都市計画学会 | 50 |
(一社)交通工学研究会 | 50 | (公社)農業農村工学会 | 50 |
(公社)地盤工学会 | 50 | (一社)日本建築士事務所協会連合会 | 12 |
(公社)森林・自然環境技術教育研究センター | 20 | (公社)日本建築家協会 | 12 |
(公社)全国上下水道コンサルタント協会 | 50 | (一社)日本建設業連合会 | 12 |
(一社)全国測量設計業協会連合会 | 20 | (一社)日本建築学会 | 12 |
(一社)全国土木施工管理技士会連合会 | 20 | (一社)建築設備技術者協会 | 12 |
(一社)全日本建設技術協会 | 25 | (一社)電気設備学会 | 12 |
土質・地質技術者生涯学習協議会 | 50 | (一社)日本設備設計事務所協会連合会 | 12 |
(公社)土木学会 | 50 | (公財)建築技術教育普及センター | 12 |
(一社)日本環境アセスメント協会 | 50 | (一社)日本建築構造技術者協会 | 12 |
(公社)日本技術士会 | 50 |
技能者1人当たりの技能レベル向上者数(W102テーブル)
W102(%)=審査基準日前3年間に1以上レベルアップした技能者の数/審査基準日現在の在籍技能者総数×100(基準日3年前時点でレベル4であった者を除く)
技能者1人当たりの技能レベル向上者数 | 数値 |
15%以上 | 10 |
13.5%以上 15%未満 | 9 |
12%以上 13.5%未満 | 8 |
10.5%以上 12%未満 | 7 |
9%以上 10.5%未満 | 6 |
7.5%以上 9%未満 | 5 |
6%以上 7.5%未満 | 4 |
4.5%以上 6%未満 | 3 |
3%以上 4.5%未満 | 2 |
1.5%以上 3%未満 | 1 |
1.5%未満 | 0 |
知識および技術または技能の向上に関する取組の状況(W10テーブル)
知識および技術または技能の向上に関する取組の状況 | 評点 |
10 | 10 |
9以上 10未満 | 9 |
8以上 9未満 | 8 |
7以上 8未満 | 7 |
6以上 7未満 | 6 |
5以上 6未満 | 5 |
4以上 5未満 | 4 |
3以上 4未満 | 3 |
2以上 3未満 | 2 |
1以上 2未満 | 1 |
1未満 | 0 |
- W10の評点アップ対策
CPDに未加入、CCUS未登録の場合は、早急に加入(登録)する。
技術者や技能者の継続学習のサポート(学習環境の構築)