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コラム

2023.10.11

建設業

コンプライアンス

盛土規制法にもとづく手続について

投稿日 2023年10月11日 最終更新日 2023年10月12日

 2021年7月に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害を契機として、宅造法(宅地造成等規制法)が抜本的に改正され、宅地、農地、森林等の土地の用途に関係なく危険な盛土を全国一律の基準で包括的に規制する盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)が施行(2023年5月)されました。これにより、工事規制区域内で一定規模以上の盛土等(盛土・切土などの土地の形質の変更、一時的な土石の堆積)を行なう場合には都道府県知事等の許可(一部届出)が必要となりました。
 あわせて資源有効利用促進法の省令が改正され(2023年5月)、建設発生土を搬出する場合に、元請建設事業者に対し、搬出先(他の工事現場、残土処分場等)の盛土規制法の許可等の確認や搬出後の土砂受領書の確認などを義務づけました。(別記事「建設発生土の搬出先の明確化とストックヤード運営事業者登録制度について」を参照願います。)

1.規制区域について

 旧宅造法では、宅地造成を行う市街地のみが規制の対象でしたが、盛土規制法では、旧宅造法の宅地造成工事規制区域を宅地造成工事規制区域へ改めるとともに(下表参照)、新たに特定盛土等規制区域(森林や農地、平地部の土地など宅地造成以外の盛土等により危険がともなう区域)が加えられました。

規制区域の拡大

土地の区域
旧宅造法宅地造成工事規制区域
 宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地、市街地予定地
盛土規制法宅地造成工事規制区域
 宅地造成、特定盛土等又は土石の堆積に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地、市街地予定地、集落、その周辺など特定盛土等規制区域地形等の条件から、特定盛土等又は土石の堆積が行われた場合に、これに伴う災害により市街地等区域その他の区域の居住者などの生命・身体に危害を生ずるおそれが特に大きいと認められる区域

 規制区域は、都道府県知事等(知事、政令市・中核市の長)が、法施行から2年の経過措置期間内(2025年5月まで)に、地域の地形・地質等に関する基礎調査を行ない、関係市町村の意見を聴いたうえで決定することになっています。なお、盛土規制法による規制は、新たな規制区域の指定後に適用されるため、それまでの間は旧宅造法の規制がそのまま適用されます。

2.規制対象行為と必要な手続き

 規制の対象となる行為は、旧宅造法の宅地を造成する工事の他、規制区域内で行なわれる宅地造成以外を目的とする盛土・切土、単なる土捨て、一時的な堆積についても及ぶことになりました。なお、規制対象となる行為は、その規模に応じて手続きが異なります。詳細は以下のとおりです。(各都道府県の条例により規制対象や規模が異なる場合があります。)

宅地造成等工事規制区域

規制対象行為必要な手続
◆土地の区画形質の変更(盛土・切土)
①盛土で高さ1m超の崖
②切土で高さ2m超の崖
③盛土と切土を同時に行って高さ2m超の崖(①②を除く)
④盛土で高さ2m超(①②を除く)
⑤盛土または切土の面積500㎡超(①~④除く)
許可
中間検査※1
定期報告(3か月毎)※1
完了検査
◆一時的な土石の堆積
①堆積の高さ2m超かつ面積300㎡超
②堆積の面積500㎡超
許可
定期報告(3か月毎)※2
完了検査
※1 ①盛土で高さ2m超の崖 ②切土で高さ5m超の崖 ③盛土と切土を同時に行って高さ5m超の崖(①②を除く) ④盛土で高さ5m超(①②を除く) ⑤盛土または切土の面積3,000㎡超(①~④除く)のいずれかの場合に実施
※2 ①堆積の高さ5m超かつ面積1,500㎡超 ②堆積の面積3,000㎡超 のいずれかの場合に実施

特定盛土等規制区域

行為必要な手続
◆土地の区画形質の変更(盛土・切土)
①盛土で高さ1m超の崖
②切土で高さ2m超の崖
③盛土と切土を同時に行って高さ2m超の崖(①②を除く)
④盛土で高さ2m超(①②を除く)
⑤盛土または切土の面積500㎡超(①~④除く)

◆一時的な土石の堆積
①堆積の高さ2m超かつ面積300㎡超
②堆積の面積500㎡超
届出
◆土地の区画形質の変更(盛土・切土)
①盛土で高さ2m超の崖
②切土で高さ5m超の崖
③盛土と切土を同時に行って高さ5m超の崖(①②を除く)
④盛土で高さ5m超(①②を除く)
⑤盛土または切土の面積3,000㎡超(①~④除く)

◆一時的な土石の堆積
①堆積の高さ5m超かつ面積1,500㎡超
②堆積の面積3,000㎡超
許可
中間検査※3
定期報告(3か月毎)
完了検査
※3 一時的な土石の堆積の場合は不要

3.許可の基準など

許可の基準

  • 土地の所有者全員の同意を得ていること
  • 周辺地域の住民に対し、説明会等の開催等により工事の内容を周知していること
  • 安全対策に関する技術的基準(地盤の安定性確保、盛り土等の形状、擁壁の設置、排水施設の設置、崖面等の侵食防止に関する基準)に適合していること
  • 工事主が必要な資力・信用を有していること
  • 工事施工者が必要な能力を有していること

その他の規制

  • 都道府県や市が許可地の一覧表を公表
  • 工事主による標識の掲示

盛土等を安全に保つ責務

  • 盛土等が行われた土地の所有者は、その土地を常時安全な状態に維持する責務を負います。

監督処分、罰則等

  • 災害防止のため必要なときは、土地所有者だけではなく原因行為者に対しても是正処置等の命令が発せられます。また、無許可、安全基準違反、命令違反等に対しては3年以下の懲役・1,000万円以下(法人の場合は3億円以下)の罰金が科せられます。

4.許可申請から工事完了までの流れ

 許可申請者は、施工主(発注者)となります。

1.許可申請前

  • 土地の所有者全員の同意
  • 周辺住民への事前周知

2.許可申請・許可

  • 許可基準への適合
  • 都道府県知事等の許可

3.工事着手

  • 現地での標識掲出
  • 定期報告~工事の施工状況について3か月ごとに報告
  • 中間検査~工事完了後に確認困難となる工程について検査

4.工事完了

  • 完了検査~安全基準への適合について現地検査

盛土規制法に係るご相談は弊所まで!

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