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コラム

2024.01.11

建設業

コンプライアンス

建設業者の不正行為と罰則、監督処分

 建設業者によっては、建設業法やその他の関連法令を遵守しなかったり、建設工事の施工に関して業務上必要とされている注意義務を怠ったり、適正な施工を確保していない場合があります。
 建設業法は、このような不正な行為に備え、法律上の義務違反者に制裁を課すことで間接的に法律の遵守等を図る行政罰(罰則、45~55条)、建設業者に対しより適切な行動を促すための行政指導(指導、助言及び勧告、41条)、行政庁の権限により直接的に法の遵守等を図る行政処分(監督処分、28条)の規定を定めています。

1.罰則

 罰則は、法律上の義務に違反した者に対し相当の刑罰(懲役、罰金)又は過料を課すことにより法律上の義務違反を一般的に予防することを目的としています。刑罰は刑事訴訟法により、過料は非訟事件手続法により手続が進められ、裁判所において言い渡されます。

 懲役や罰金刑(過料は除く)を受けた場合は、建設業許可の欠格事由に該当するため、許可の取消し処分を受け、取消しの日から5年間は建設業許可を取得することができなくなります。

三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金

  • 許可を受けないで建設業を営んだ者
  • 特定建設業者でない者が一定金額以上の下請負契約を締結して営業した場合
  • 営業の停止に違反して営業した者
  • 営業の禁止に違反して営業した者
  • 虚偽又は不正の手段で許可を受けた者

処罰されるのは行為者(法人又は人の、代理人、使用人その他の従業員)です。

情状により懲役及び罰金が併科される場合があります。 

行為者のほか、その法人に対しても一億円以下の罰金刑が科されます。

六か月以下の懲役又は百万円以下の罰金

  • 許可申請書又はその添付書類へ虚偽の記載をして提出した者
  • 変更等の届出をしなかった者又は虚偽の記載をして提出した者
  • 経営状況分析・経営規模等評価の申請書(添付書類意を含む)へ虚偽の記載をして提出した者

処罰されるのは行為者(法人又は人の、代理人、使用人その他の従業員)です。

情状により懲役及び罰金が併科される場合があります。

百万円以下の罰金

  • 工事現場に主任技術者又は監理技術者を適切に置かなかったとき
  • 許可の失効・営業の停止・許可の取消しを受けた旨を注文者に通知しなかったとき
  • 行政庁からの報告・資料提出要請に応じない又は虚偽の報告・提出をしたとき
  • 行政庁の検査を拒み、妨げ、忌避したとき

処罰されるのは行為者(法人又は人の、代理人、使用人その他の従業員)です。

十万円以下の過料

  • 廃業等の届出を怠った者
  • 正当な理由なく中央建設工事紛争審査会からの調停の出頭要求に応じなかった者
  • 店舗及び工事現場に標識(建設業の許可票)を掲げない者
  • 無許可業者が、許可業者と誤認されるおそれのある表示をした場合
  • 帳簿の備付け等(無記載、虚偽記載、保存義務)に違反した者

2.監督処分

 罰則とは別に行政庁による監督処分があります。監督処分は、処分の権限を行政庁に与え、この権限の的確な運用により、建設業者に対し、法に違反する事実があった場合等にその是正のため具体的にとるべき措置を命令し(指示)、又は法の規定により与えられた法律上の地位の全部又は一部を一定期間停止し(営業の停止)、あるいははく奪する(許可の取消し)ことにより、不適正な者の是正を行い、又は不適格者を建設業者から排除する行政上の監督権の一端をなすものです。既に行われた義務違反に対する制裁としての罰則とは異なり、建設業者の事後の業務運営の適正化を促すことが目的とされています。
 どのような監督処分を行うかは、行政庁が、「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」に従い、当該不正行為等の内容・程度、社会的影響、情状等を総合的に勘案して行なうことになっています。

 また、罰則の適用対象となる不正行為等については、告発をもって臨むなど、法の厳正な運用に努めることとされています。

 なお、監督処分の内容については、各都道府県のHPや国交省のネガティブ情報検索サイトで速やかに公表されます。  ☞国土交通省ネガティブ情報等検索サイト

指示処分及び営業の停止処分

 以下(法28条第1項1号~9号)に該当する不正があった場合は、当該不正行為等が故意又は重過失によるときは原則として1年以内の営業停止処分を、その他の事由によるときは原則として指示処分を行うこととされています。なお、指示処分を受けた者が指示の内容に従わない場合や指示を受けた日から3年以内に再び類似行為を行った場合は、営業停止処分を行なうとされています。

  1. 不適切な施工により公衆に危害を及ぼしたとき又はそのおそれが大であるとき
  2. 請負工事に関し不誠実な行為をしたとき(※1
  3. その業務に関し他の法令に違反し、建設業者として不適当であると認められるとき(※2、※3
  4. 一括下請負の禁止、特定専門工事の再下請負の禁止の規定に違反したとき
  5. 配置技術者が工事の施工に関し著しく不適当で、かつ、その変更が公益上必要であると認められるとき
  6. 元請負人又は下請負人が、許可を受けない(全く許可を受けていない若しくは当該工事の種類に係る許可を受けない)で建設業を営む者と下請負契約を締結したとき(軽微な工事を除く)
  7. 下請負人が、特定建設業許可を受けていない元請負人と4500万円以上(建築一式工事にあっては7000万円以上)の下請負契約を締結したとき
  8. 情を知って、営業の停止又は禁止の処分を受けている者と当該営業を停止され又は禁止された営業の範囲に係る下請け契約を締結したとき(軽微な工事も含む)
  9. 入札契約適正化法違反(施工体制台帳の発注者への提出義務違反、同台帳の点検の拒否)、履行確保法違反(住宅建設瑕疵担保保証金の供託にかかわる義務違反)、特定建設業者が行政庁の勧告に従わないとき

※1.①虚偽申請(公共工事において入札前の調査資料に虚偽の記載をした。経営事項審査において完成工事高の水増し等の虚偽の申請をした。)主任技術者の不設置等(配置技術者の不設置などの他、技術検定受験時や監理技術者証交付申請時に虚偽の実務経験証明を行なった。配置技術者の専任義務違反など)粗雑工事等による重大な瑕疵 施工体制台帳の不作成

※2.建設業者の業務に関する談合・贈賄等(刑法違反(公契約関係競売等妨害罪、談合罪、贈賄罪、詐欺罪)、補助金等適正化法違反、独占禁止法3条違反)

※3.①労働安全衛生法違反 建設工事の施工等に関する違反(建設基準法違反、労働基準法違反、宅地造成及び特定盛土規制法違反、廃棄物処理法違反、特定商取引に関する法律違反、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律違反)信用失墜行為(法人税法、消費税法等の税法違反、暴対法違反) 健康保険法違反、厚生年金保険法違反、雇用保険法違反

  • 建設業法の規定のうち、19条の3(不当に低い請負代金の禁止)、19条の4(不当な使用資材等の購入強制の禁止)、19条の5(著しく短い工期の禁止)、24条の3第1項(下請代金の支払い)、24条の4(検査及び引渡し)、24条の5(不利益取扱いの禁止)、24条の6第3項及び第4項(特定建設業者の下請代金の支払期日等)については、通常同時に独占禁止法19条の規定に違反することになるので、行政の一元化を図るため、監督処分の対象から除外し、独占禁止法の手続きに委ねる公正取引委員会による差止命令等の措置)とされています。なお、監督行政庁(国交大臣又は都道府県知事)は、建設業者がこれらの規定に違反している場合には公正取引委員会に対する措置請求ができることになっています。
  • 無許可業者も、公衆に危害を及ぼしたとき又はそのおそれが大であるとき(1号)や請負契約に関し著しく不誠実な行為をしたとき(2号)は、管轄区域内の都道府県知事から指示処分を受けることがあります。
  • 処分権者は、許可をした行政庁と営業が行われた区域を管轄する都道府県知事です。
  • 指示処分又は営業停止処分を受けた場合は、経営事項審査(経営規模等評価)の社会性W4の項目において減点評価されます。また、国や地方公共団体から公共工事の入札参加資格の指名停止を受ける場合があります。  

許可の取り消し処分

 以下(法29条第1項1号〜8号)に該当する場合は、許可をした行政庁はその許可を取消さなければならない、とされています。

  1. 常勤役員等(経管)又は専任技術者に係る許可の基準を満たさなくなった場合
  2. 欠格要件の一部(法8条1号及び7号~13号)に該当した場合(※4
  3. 許可換えをすべきであったのに許可換えしていない場合
  4. 許可を受けてから1年以内に営業を開始せず、又は1年以上営業を休止した場合
  5. 廃業等の届出をした場合
  6. 個人事業主の死亡後相続の認可がされなかった場合
  7. 不正の手段により許可、更新、認可を受けた場合
  8. 法28条第1項1号~9号の不正行為(指示・営業停止処分事由)のいずれかに該当し、情状特に重い場合

※4.破産者で復権を得ない者 禁固以上の刑に処されてから5年を経過しない者 建設業法、建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるもの若しくは暴対法の規定に違反したことにより、又は刑法204条(傷害罪)、206条(現場助勢罪)、208条(暴行罪)、208条の2(凶器準備集合罪)、222条(脅迫罪)若しくは247条(背任罪)若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 暴力団員等で亡くなった日から5年を経過しない者 精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者 未成年者の法定代理人が欠格要件の一部に該当する場合 法人の役員又は政令使用人が欠格要件の一部に該当する場合 個人で政令で定める使用人のうち欠格要件の一部に該当する場合

  • 許可に付された条件に違反した場合は、その許可が取り消される場合があります。
  • 処分権者は、許可をした行政庁となります。

3.指導、助言及び勧告

 建設業を営む者や建設業者団体に対して行なわれる指導、助言及び勧告は、行政庁が強制力によることなく、行政客体の協力によって行政目的(建設工事の適正な施工の確保と建設業の健全な発達)達成のために行なう事実行為としての誘導行為と言われています。

なお、正当な理由なく勧告に従わない場合は、指示処分を受ける場合があります。

【参考文献】建設業法解説(大成出版社)

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