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農地転用許可制度について
投稿日 2024年2月1日 最終更新日 2024年2月3日
農地に建築物を建設したり、農地を駐車場や資材置場にするなど、農地を農地以外の目的で利用することを農地転用といいます。農地転用を行う場合には、農地法に基づく許可が必要です。
許可を受けずに無断で農地を転用(違反転用)した場合は、農地所有者のみならず工事その他の行為を請け負った者やその下請負人も罰則の適用を受けることになります。農水省の違反転用の実態に関する調査では、農業者以外による違反転用も多く存在しており、違反転用者の多くは、農地転用許可制度を認識していなかったことが判っています。
工事対象の土地が休耕地であった場合など外見上農地として認識しづらい場合もあります。また、農地であった場合には、農地転用許可取得の有無を確認する必要があります。
☞(一社)全国防水工業協会HP「農地転用許可の周知について(国土交通省)」
1.農地転用許可制度について
この制度は、優良農地を確保するため、農地の優良性や周辺の土地利用状況等により農地を区分し、転用を農業上の利用に支障がない農地に誘導するとともに、具体的な転用目的を有しない投機目的、資産保有目的での農地の取得を制限する制度です。
- 農地転用とは、農地を農地以外の目的で利用することをいい、具体的には農地等に区画形質の変更を加えて住宅、工場、店舗、道路等農地以外のものにすることをいいます。また、農地の形質になんら変更を加えない場合でも、駐車場や資材置場など農地を耕作の目的に供さない状態にする場合も農地転用に該当します。
- 農地には、休耕地や不耕作地も含まれます。
2.許可申請の区分
農地法 | 許可が必要な場合(※1) | 許可申請者 | 許可権者 |
4条 | 農地の所有者が農地を転用する場合(自己転用) | 転用を行う者(農地に権利を有する者) | 都道府県知事 指定市町村長 |
5条 | 農地、採草放牧地を転用するため権利を設定し、又は移動する場合(※2) | 設定人と被設定人 又は 譲渡人と譲受人 | 都道府県知事 指定市町村長 |
※1.次の場合には許可は不要です。①国・都道府県・指定市町村が行なう場合(学校、社会福祉施設、病院、庁舎及び宿舎を除く) ②土地収用される場合 ③農地中間管理事業の推進に関する法律による場合(学校、社会福祉施設、病院、庁舎及び宿舎を除く)
※2.権利の設定には、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権などが該当します(抵当権を除く)。権利の移動には売買などが該当します。
- 許可申請書は、農業委員会を経由して、都道府県知事等(知事又は指定市町村長)に提出します。
- 農地が4haを超える場合には、あらかじめ農林水産大臣と協議する必要があります。
- 市街化区域内は、農業委員会への届出で転用可能です。
3.農地区分と許可の方針
詳しくは、農水省の通知「農地法の運用について」を参照してください。
立地基準 (農地区分)
農地を営農条件や市街化の状況などで5種類に区分することによって、優良農地における転用を厳しく制限し、農業上の利用に支障が少ない第3種農地へ転用を誘導しています。
農地区分 | 営農条件、市街地化の状況 | 許可の方針 |
農用地区域内農地(※3) | 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 | 不許可 ただし、農用地利用計画に適合する農業用施設を建設する場合等は許可 |
甲種農地 | 市街化調整区域内で、・農業公共投資後8年以内農地・集団農地で高性能農業機械での営農可能農地 | 原則不許可 ただし、公益性の高い事業の用に供する場合等は許可(第1種農地の場合より厳しい) |
第1種農地 (乙種) | ・集団農地(10ha以上)・農業公共投資対象農地・生産力の高い農地 | 原則不許可 ただし、公益性の高い事業の用に供する場合等は許可 |
第2種農地 (乙種) | ・農業公共投資の対象になっていない小集団の生産力の低い農地・市街地として発展する可能性のある区域内の農地 | 第3種農地に立地困難な場合等に許可 |
第3種農地(乙種) | ・都市的整備がされた区域内の農地・市街地にある区域内の農地 | 原則許可 |
※3.農用地区域内農地を青地(あおじ)と呼ぶことがあります。これに対し、甲種農地、第1種~第3種農地までを白地(しろじ)と呼びます。青地に指定されている農地を転用する場合は、農振除外申請が必要となります。
一般基準
次に該当する場合は不許可となります。
- 転用の確実性が認められない場合(他法令の許認可の見込みがない場合、関係権利者の同意がない場合など)
- 周辺農地への被害防除措置が適切でない場合
- 農地の利用の集積に支障を及ぼす場合
- 一時転用の場合に農地への原状回復が確実と認められない場合
4.許可申請手続き
農地転用許可申請書に必要な書類を添付し、農地の所在する市町村の農業委員会を窓口として、都道府県知事等に申請します。
【農地転用許可申請書に添付する書類(参考)】
実際の申請にあたっては、農地の所在する都道府県等に確認してください。
・法⼈にあっては、定款若しくは寄附⾏為の写し⼜は法⼈の登記事項証明書 |
・⼟地の位置を⽰す地図及び⼟地の登記事項証明書(全部事項証明書に限る) |
・申請に係る⼟地に設置しようとする建物その他の施設及びこれらの施設を利⽤するため必要な道路、 ⽤排⽔施設その他の施設の位置を明らかにした図⾯ |
・資⾦計画に基づいて事業を実施するために必要な資⼒及び信⽤があることを証するい書⾯ |
・申請に係る農地を転⽤する⾏為の妨げとなる権利を有する者がある場合には、その同意があったことを証する書⾯ |
・申請⼟地が⼟地改良区の地区内にある場合には、その⼟地改良区の意⾒書 |
・その他参考となる書類 |
◆農地転用許可手続きの流れ
農業委員会に提出された許可申請書類は、転用農地が30a以下の場合、農業委員会による意見書が付されて都道府県知事等に送付されます。転用する農地が30aを超える場合は、都道府県農業委員会ネットワークに対する意見聴取手続きを経て都道府県知事への送付となります。
- 提出から許可の通知(許可指令書)が届くまでの期間の目安(標準処理期間)は、大阪府の場合4条申請で6週間となっています。
- 転用が完了したら、法務局に許可指令書を持参し、地目変更登記の手続きをする必要があります。
5.市街化区域内における農地転用の届出
市街化区域内の農地を転⽤する場合は、あらかじめ農地の所在する市町村の農業委員会に必要な書類を添付して届出をします。
【届出書の添付書類(参考)】
・⼟地の位置を⽰す地図及び⼟地の登記事項証明書(全部事項証明書に限る) |
・賃借権が設定されている場合には、解約の許可等があったことを証する書⾯ |
- 転用が完了したら、法務局に届出受理通知書を持参し、地目変更登記の手続きをする必要があります。
6.違反転用者に対する処分等
違反転用の場合や、転用許可に係る事業計画どおりに転用していない場合には、農地法に違反することとなり、工事の中止や原状回復等の命令がなされる場合があります。また、罰則の適用もあります。(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金))
【参考】土地利用計画(農振法・都市計画法)と農地転用制度の関係
土地利用計画
都市及び農村において、土地を計画的に利用するため、農地的土地利用については農振法の農業振興地域整備計画で、都市的土地利用については都市計画法の都市計画で規制されています。なお、両者の土地利用区分の関係は以下のとおりです。
農業振興地域制度と農地転用許可制度の関係
農地転用規制は、農業上の土地利用のゾーニングを行う農業振興地域制度と個別の農地転用を規制する農地転用許可制度の2つの制度で運用されています。