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宅建業免許の申請手続上の留意事項
投稿日 2024年2月17日 最終更新日 2024年2月17日
宅建業免許の申請手続きはそれほど難易度が高いわけではありませんが、制度にやや独特な部分があるため、曖昧に理解したつもりでいると思わぬ廻り道をしてしまったり、最悪の場合、免許を失効させてしまう場合もあり得ます。
ここでは、大阪府で宅建業免許の手続きをする際に、特に留意したい事項について紹介します。
1.宅建業法上の事務所と商業登記
宅建業法は登記された本店所在地で事務所を開設することを基本とし、そのうえで支店や従たる事務所を開設することになっています。これは、免許の区分(大臣・知事)や供託制度上の管轄法務局、クーリング・オフ(契約行為の撤回)の要件、紛争となった場合の管轄裁判所等々を曖昧にしないため、と言われています。
- 主たる事務所(本店事務所)は、商業登記されていなければなりません。
- 従たる事務所の名称を「〇〇支店」として免許申請をする場合は、その支店の商業登記が必要ですが、その他の名称(〇〇営業所、〇〇店等)を用いて申請する場合は商業登記は不要です。ただし、この場合も宅建業法上の事務所として扱われるので、営業保証金の供託や専任の宅地建物取引士の設置が必要になります。なお、宅建業を営まない支店については、宅建法上の事務所の扱いにならないため、申請の必要はありません。
- 既に法人として別の事業を行っていて、兼業として宅建業を始める場合で宅建業は支店でしか行わない場合でも、本店は宅建業法上の本店事務所として扱われます。この場合、本店には営業保証金の供託や専任の宅地建物取引士の設置が求められます。
2.常勤の代表者
事務所の代表者は契約締結などの代表権を常に行使しうる状態でなければなりません。つまり、代表者には事務所に常勤していることが求められます。代表者が事務所に常勤できないときや本店以外の事務所を置くときは、代表権行使を委任した政令使用人を置く必要があります。
- 代表取締役が他法人の役員を兼務している場合
①他法人が常勤で当該法人が非常勤の場合は、事務所に政令使用人を置く必要があります。特例として、同一建物内で複数会社の代表を兼ねている場合のみ「代表権行使の誓約書」を提出すれば代表権行使に支障はないと見なされ、政令使用人を置く必要はありません。(法人代表者が専任の宅地建物取引士を兼ねている場合の兼務はできません)
②他法人の非常勤役員を兼務している場合は、政令使用人を置く必要はありませんが、略歴書にその旨の記載が必要です。
- 代表取締役が複数名いる場合は、宅建業の代表者を1名を決める必要があります。(申請書の一面にはこの代表者のみ記載することになります。)
3.建設業者が宅建業を兼業する場合
建設業許可業者が宅建業を兼務している場合、建設業の経営業務の管理責任者、専任技術者のように、事務所や営業所等において、常勤性や専従性を要件として設置されている者は、宅建業で常勤性や専従性が求められている常勤の代表者、政令使用人、専任の宅地建物取引士を兼務することができません。
大阪府の場合は、同一法人(または同一個人業者)で、同一場所(同一建物)で勤務する場合に限り、個々のケースで、勤務実態、業務量を斟酌し常勤性・専従性に問題がないと判断できる場合には、兼務が認められることがあります。
(新規免許申請の際には「法令による専任業務の兼務に関する申立書」の提出が必要です。☞大阪府宅建業免許申請の手引きp27)
4.専任の宅地建物取引士の兼任について
宅建業の事務所が建築士事務所や建設業の営業所等を兼ねている場合で、その事務所の専任の宅地建物取引士が建築士法、建設業法等の法令により専任を要する業務に従事しようとする場合は、同一法人(または同一個人業者)で、同一場所(同一建物)で勤務する場合に限り、個々のケースで、勤務実態、業務量を斟酌し常勤性・専従性に問題がないと判断できる場合には、兼任が認められることがあります。
(新規免許申請の際には「法令による専任業務の兼務に関する申立書」の提出が必要です。☞大阪府宅建業免許申請の手引きp27)
個人の宅地建物取引業者で専任の宅地建物取引士でもある者が、行政書士、司法書士、土地家屋調査士等の自由業に従事する場合は、同一建物内において兼業している場合に限り、兼任が認められる場合があります。(他の法人等に雇用されている場合は自由業とはみなされません。)なお、この場合は、免許申請(新規・更新)や変更届の都度、「専任の宅地建物取引士自由業兼業に関する申立書」の提出が必要です。
5.他の宅建業者から転職してきた取引士を専取にするときの注意点
宅建業免許の新規申請をするときに、他の宅建業者から転職してきた宅建士を専任の宅地建物取引士にすることがありますが、この場合、その宅建士は、申請日より前に従前の従事先を退職し現従事先に就職していることが必要です。さらに、転職してきた宅建士が従前の従事先を退職した旨の届出(宅建士登録簿の変更登録)をしているかどうかを確認し、もしも届出が未了のようであれば、遅くとも宅建業免許の申請日までには届出を済ませておくのがベターです。
宅建士登録簿の現従事先への登録は、免許証受取の際に行います(登録日は就職した日ではなく免許日となります)。このように、退職と就職の変更登録は、2回にわけてする必要があります。同時にすることはできません。
6.宅建業者名簿の変更届と宅建士資格登録簿の変更登録の申請
宅建業者は、免許を受けた後、免許申請書に記載した事項について変更があった場合は、変更が生じた日から30日以内に、免許権者(大臣又は知事)に届出(宅地建物取引業者名簿登載事項の変更届出書の提出)をしなければなりません。
一方、宅建士は、資格登録後に一定の事項について変更があった場合は、遅滞なく知事に変更申請(宅地建物取引士資格登録簿変更登録申請書の提出)をしなければなりません。
宅建業者が行う届出と宅建士が行う変更申請で書き換えられる名簿の種類は異なります。そのため、例えば宅建業者が専任の宅建士の退任に伴う変更の届出をしたとしても、その届出により宅建士個人の登録簿の内容が自動的に変更されることはありません。この場合は、宅建士が自ら従事先を退職した旨の変更申請をする必要があります。
【業者名簿と宅建士登録簿】
宅地建物取引業者名簿(8条第2項) | 宅地建物取引士資格登録簿(18条第2項) |
①免許証番号及び免許の年月日 | ①氏名▲ |
②商号又は名称◆ | ②生年月日 |
③法人である場合においては、その役員の氏名及び政令使用人があるときは、その者の氏名 | ③本籍 性別 |
④個人である場合においては、その者の氏名及び政令使用人があるときは、その者の氏名 | ④住所(居所) |
⑤事務所の名称及び所在地 | ⑤試験合格年月日 合格証書番号 |
⑥前号の事務所ごとに置かれる専任の宅地建物取引士の氏名(※1)▼ | ⑥実務経験に関する事項 実務経験先の免許証番号、商号又は名称及びそこでの職務内容 期間 合計 |
⑦第五十条の二第一項の認可を受けているときは、その旨及び認可の年月日 | ⑦国土交通大臣の認定に関する事項 認定の内容 認定年月日 |
⑧指示処分又は業務停止の処分があつたときは、その年月日及び内容 | ⑧従事先(業務に従事する宅地建物取引業者に関する事項 商号又は名称 免許証番号)(※2、3) |
⑨宅地建物取引業以外の事業を行なつているときは、その事業の種類 | ⑨事務禁止等の処分 年月日 内容 |
⑩宅地建物取引士証に関する事項 交付年月日 有効期間の満了する日 発行番号 | |
⑪登録の移転に関する事項 試験を行った都道府県知事 移転前の都道府県知事 |
太字部分の変更があった場合は、変更届が必要です。
◆の場合 業者名簿の変更届だけでなく宅建士登録簿の変更申請(従事先)も必要
▼専任の宅建士が退職する場合、業者名簿の変更届(専取減員)だけでなく宅建士登録簿の変更申請(従事先)も必要
▲宅建士が専取の場合、宅建士登録簿の変更申請(氏名)だけでなく業者名簿の変更届(専取氏名)も必要
宅建業者が免許替えをした場合や廃業した場合も、宅建士登録簿の変更申請(従事先)が必要です。
※1.業者名簿に記載される宅建士は、専任の宅建士だけであり、一般の宅建士は記載されません。
※2.登録簿に記載する従事先は、宅建業者だけであり、他業種(宅建業者の他部門を含む)に勤務している場合は登録不要です。
※3.登録簿に記載する従事先の情報は、商号(名称)と免許証番号だけなので、従事先の住所が変更になった場合や従事先で別の支店に配属になった場合などの変更登録は不要です。
7.新規申請で注意したいこと
宅建業免許の新規申請中の事務所移転、役員変更、専任の宅建士の変更は禁物です。申請取り下げとなります。(取り下げ願いの提出が必要になります。取り下げがない場合は免許拒否処分を受けることになります。)
また、免許証の交付を受けるには、大阪府庁に出向く必要がありますが、この時免許ハガキが無かったり、供託又は協会加入の手続きが未了であったり、専任の宅建士の登録が前の勤務先のままであったりした場合は、免許証の交付を受けることができません。従って、宅建業を始めることはできません。
8.変更届と更新申請
5年に一度の宅建業免許の更新を受けるときは、変更の届出を全て済ましているか確認する必要があります。変更届が未了の場合、更新申請を受け付けてもらえません。変更届と更新申請を同時に受付けてもらうことは可能ですが、変更の届出は変更が生じた日から30日以内(宅建業法第9条)となっていることに留意してください。