建設業
建設機械の所有権保存登記と打刻又は検認の制度について
投稿日 2024年5月8日 最終更新日 2024年5月8日
民法上、動産に抵当権を設定することはできませんが、建設業者が所有する建設機械については特別法(建設機械抵当法)により例外的に抵当権を設定することが認められています。
抵当権を設定するためには、建設機械の所在する都道府県知事から打刻や検認(※1)を受け打刻(検認)証明書を交付してもらう必要があります。この証明書により所有権保存登記と抵当権の設定が可能となります。この制度は、建設機械の抵当権の設定を容易にし、建設機械に関する動産信用を増大させることにより建設工事の機械化の促進を図ることを目的としています。
建設機械は高い買い物ですが、制度の利用は、購入の際の検討材料になりそうです。
※1.打刻とは、機械に固有の記号を打ち込む行為をいい、検認とは打刻を確認する行為を言います。
1.打刻・検認の申請先
打刻・検認の申請先は、建設機械が所在する地を管轄する都道府県知事です(国土交通大臣からの委任分を含む)。打刻・検認日の調整が必要となることから、申請前の事前相談が必要です。
2.打刻・検認を受けるための要件
- 建設機械抵当法施行令別表に定める機械類であること
- その機械が申請先の都道府県に所在していること
- 質権・差押え・仮差押え・仮処分の目的となっていないこと
- 所有者(申請者)が建設業許可を得ていること
【施行令別表に定める建設機械】
種類 | 名称(範囲) |
1.掘削機械 | ●ショベル系掘削機(ショベル、バックホウ、ドラグライン、クラムシェ ル、クレーン又はパイルドライバーのアタッチメントを有するもの) ●連続式バケット掘削機(走行装置及び22kw以上の掘削用原動機を有するもの) |
2.基礎工事用機械 | ●くい打ち機及びくい抜き機(やぐら及び原動機を有し、ハンマー、起振機又はくい 抜き装置の重量が0.5t以上のもの ) ●グラウトポンプ(原動機及びグラウトポンプ用ミキサーを有するもの) ●ペーパードレーンマシン ●大口径掘削機(スクリュー式でないもの) ●アースオーガー ●地下連続壁施工用機械 |
3.トラクター類 | ●トラクター(自重が3t以上のもの) ●ブルドーザー(自重が3t以上のもの) ●トラクターショベル(バケット容量が0.4㎥以上のもの) |
4.運搬機械 | ●スクレーパー(積載容量が3㎥以上のもの) ●機関車●運搬車(積載重量が15t以上のもの ) |
5.起重機塁 | ●ジブクレーン(つり上げ能力が3t以上のもの) ●タワークレーン(つり上げ能力が3t以上のもの) ●デリッククレーン(つり上げ能力が3t以上のもの) ●ケーブルクレーン(巻上げ装置、走行装置及び原動機を有し、つり上げ能力が2t以上のもの) ●ウインチ(22kw以上の原動機を有するもの) ●エレベーター |
6.ボーリング機械 | ●ボーリングマシン(3kw以上の原動機を有するもの ) ●ドリルジャンボ(鑿(さく)岩機を支持するアームが2本以上のもの) ●クローラードリル |
7.トンネル機械 | ●たて坑掘進機 ●トンネル掘進機 ●シールド掘進機 ●ずり積み機 |
8.整地・締固め機械 | ●モーターグレーダー(自重が5t以上のもの) ●スタビライザー ●アグリゲートスプレッダー ●ロードローラー(自重が8t以上のもの) ●タイヤローラー ●振動ローラー(自走式のものにあっては自重が8t以上のもの、被牽(けん)引式のものにあっては自重が2t以上の もの) |
9.砕石・選別機械 | ●フィーダー(3kw以上の原動機を有するもの) ●クラッシャー(ジョークラッシャー、ジャイレクトリークラッ シャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ロッドミル又はボールミルで、3kw以上の原動機を有するもの) ●選別機(トロンメル、バイブレイティングスクリーン又はクラッシファイヤーで、3kw以上の原動機を有するもの) ●ウオッシャー(ドラムウォッシャー又はスクリューウォッシャーで、 3kw以上の原動機を有するもの ) |
10.コンクリート機械 | ●セメント空気輸送機(フラクソー式輸送機又はキニオンポンプ) ● コンクリートプラント(骨材貯蔵びん、計量装置及びミキサーを有するもの) ●コンクリートミキサー(混練容量が0.35㎥以上のもの) ●コンクリートポンプ(排送能力が毎時5㎥以上のもの) ●コンクリートプレーサー(打設能力が毎時10㎥以上のもの) ●アジテーターカー(ゴムタイヤ式でないもの) |
11.舗装機械 | ●アスファルトフィニッシャー(敷きならし装置、仕上げ装置、走行装置及び原動機を有するもの) ●アスファルトプラント(コールドエレベーター、骨材乾燥機、ホットエレベー ター、ふるい分け装置、骨材貯蔵びん、アスファルト 溶解がま及びミキサーを有するもの) ●アスファルトクッカー ●コンクリートフィニッシャー(振動機及び原動機を有するもの) ●コンクリートスプレッダー(原動機を有するもの) ●コンクリートペーパー(装軌式のもの) |
12.船舶 | ●しゅんせつ船(ポンプしゅんせつ船、ディッパーしゅんせつ船又はグラブしゅんせつ船で、独航機能を有しないもの ) ●砕岩船(独航機能を有しないもの) ●起重機船(独航機能を有しないもの) ●くい打ち船(独航機能を有しないもの) ●コンクリートミキサー船(独航機能を有しないもの) ●サンドドレーン船(独航機能を有しないもの) ●土運船(鋼製で、独航機能を有しないもの ) ●作業台船(鋼製で、独航機能を有しないもの ) |
13.その他 | ●空気圧縮機(14kw以上の原動機を有するもの) ●サンドポンプ(29kw以上の原動機を有するもの) ●発動発電機(発電機容量が15kva以上のもの) |
3.申請に必要な書類(大阪府の場合)
申請に必要な書類は、以下のとおりです。
申請受付後、実地にて打刻・検認が行われます(打刻の場合、申請先の職員が電動工具にて実施)。打刻・検認実施後に建設機械打刻(検認)証明書が交付されます。これらの証明書は、所有権保存登記申請の添付書類になりますが、有効期間が短いので注意が必要です(打刻・検認日の翌日から起算して14日間のみ有効)。
【必要書類(正1部・副2部)】
(1)建設機械打刻検認申請書(規則様式第1号) (2)建設業許可証明・確認書 (3)法人税納税証明書(その1) (4)申請に係る建設機械の所有権が確認できる書類 ・売買契約書、船舶建造契約書などの写し(申請の際に原本の提示が必要) ・所有権譲渡証明など (5)印鑑証明書(上記(4)の契約書などに係る押印者の当事者双方ともに必要) (6)申請に係る建設機械が質権、差押、仮差押、仮処分の目的になっていないことがわかる書類(誓約書) (7)商業登記簿謄本(上記(4)の契約書などに係る押印者の当事者双方ともに必要) (8)申請に係る建設機械について、前所有者が既に登記を行っていた場合は、当該建設機械の閉鎖謄本 (9)仕様書(配置図) (10)委任状(代理人が申請する場合。正本には原本を副本には写しを添付) |
※申請手数料は、36,000円です。
3.所有権保存登記及び抵当権設定登記
所有権移転登記と抵当権設定登記は、打刻を行った都道府県の法務局で行います。