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屋外広告物の設置許可申請について
投稿日 2024年6月12日 最終更新日 2024年10月25日
広告板や広告塔、壁面広告などの屋外広告物を設置し維持する場合には、屋外広告物法や条例により、屋外広告物設置の許可を申請する必要があります。また、これらの屋外広告物の表示・設置に関する工事は、その工事場所を所轄する知事の登録(又は届出)を受けた屋外広告業者でなければ実施することはできません。
当コラムでは、屋外広告物規制の概要と屋外広告物設置申請について解説します。
屋外広告業の登録制度については、弊所コラム「屋外広告業の登録について」をご覧ください。
1.屋外広告物規制の概要
屋外広告物法は、良好な景観の形成又は風致の維持、公衆に対する危害の防止を目的とした法律です。この法律は1949年に制定された古い法律であり規律密度も低いとされ、規制内容の実質は都道府県や政令市の屋外広告物条例に委任されています。さらに、2004年の景観法公布に伴う改正により、景観行政団体である市町村に対して屋外広告物条例の制定権の移譲が可能になっているなど、地域により規制内容にばらつきがあることに注意をする必要があります。
屋外広告物とは
屋外広告物法(第2条第1項)では、次の4つの条件全てに該当するものとされています。
- 常時又は一定の期間継続して
- 屋外で
- 公衆に表示されるものであって
- 看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するもの
上記の条件を満たす場合は、営利を目的としないもの、私有の店舗や敷地に設置する広告物も規制の対象となります。ただし、街頭で配布されるチラシ、建物や自動車等のガラス面の内側から表示した広告物(※1)は、屋外広告物には該当しません。
※1.自治体によっては特定屋内広告物として規制の対象とされる場合があります。
屋外広告物の種類
大阪府「屋外広告物のてびき」からの引用
規制の内容 大阪府の場合(政令市、中核市除く)
禁止区域 | 屋外広告物を掲出・設置できない場所 ●第一種低層住居専用地域 ●重要文化財(建造物に限る)に指定された敷地 ●史跡・名勝・天然記念物に指定または仮指定された地域 ●大阪府指定有形文化財(建造物に限る)の敷地 ●大阪府指定史跡、大阪府指定名勝、大阪府指定天然記念物の地域 ●古墳、墓地 など |
禁止物件 | 屋外広告物を掲出・設置できない物件 ●街路樹、路傍樹 ●橋梁、地下道の上屋 ●トンネル、高架構造物、道路の分離帯、道路・鉄道の擁壁 ●街灯、信号機、道路標識 ●道路上の柵、駒止め ●消火栓、火災報知器 ●郵便ポスト、電話ボックス ●送電塔、送受信塔 ●形像、記念碑 ●景観法で指定された景観重要建造物及び景観重要樹木 |
許可区域 | 屋外広告物の掲出・設置に許可が必要な場所 ①第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、風致地区 ②景観地区(景観法) ③特別緑地保全地区(都市緑地法) ④伝統的建造物群保存地区(文化財保護法) ⑤保安林の区域(森林法) ⑥自然環境保全地域(自然環境保全法) ⑦大阪府自然環境保全地域、大阪府緑地環境保全地域(大阪府自然環境保全条例) ⑧知事が指定する景観計画区域及び隣接する区域(淀川等沿岸区域、大和川沿岸区域、北摂山系区域、生駒山系区域、金剛・和泉葛城山系区域、大阪湾岸区域)、古墳周辺区域 ⑨道路、鉄道、軌道、索道およびこれらに接続する地域で、知事が指定するもの(国道、府道、都市計画法の規定により指定された都市計画区域内の幅員16m以上の道路、鉄道、軌道、索道ならびにこれらから両側 500mまでの地域のうち、これらから展望できる範囲にある区域) ⑩公園、緑地、広場、運動場、動物園、植物園、遊園地、競馬場、競輪場、船着場、火葬場、葬祭場の敷地内 ⑪社寺、教会の敷地内 ⑫公衆便所の外壁 |
許可基準 | 許可区域において、建物の屋上又は壁面に広告物を掲出する場合の基準 ●屋上広告物 たて:建物の高さの 2/3 以内 よこ:建物の幅の範囲内 ●壁面広告物 たて:建物の高さの範囲内 よこ:建物の幅の範囲内 許可区域⑨は、路線等を中心とする表示方法等の制限区域【路線型表示制限区域】として、道路等からの後退距離や大きさなどの制限があります。路線型表示制限区域は、名神高速道路等の 23 路線の沿線と、阪神高速湾岸線・高速自動車国道関西国際空港線の沿線に分けられ、さらに都市計画法で定められる用途地域により分類されます。 許可区域⑧は、面的な表示方法等の制限区域【面型表示制限区域】として、遠景に配慮した広告物の大きさの制限があります。 ☞大阪府「屋外広告物のてびき」p7~16参照 電柱や停留所標識は、表示方法等の制限物件として、その形状、面積、色彩、意匠などの表示方法に制限があります。禁止区域内や許可区域内で電柱等に広告物を掲出しようとする場合は、この規制内容が許可基準となります。 ☞大阪府「屋外広告物のてびき」p17参照 |
適用除外広告物 | 社会生活を営む上で必要性の高い以下に掲げる広告物は、各種の規制(禁止物件、禁止区域、許可区域、表示方法等の制限区域、表示方法等の制限物件)の適用が全部又は一部除外されます。 ●法令の規定により表示する広告物等 ●公職選挙法による選挙運動のために使用するポスター等 ●自家用広告物で、その表示面積が 7 ㎡を超えないもの ●冠婚葬祭又は祭礼のため一時的に表示する広告物等 ●国又は地方公共団体が公共目的を持って表示する広告物等 など ☞大阪府「屋外広告物のてびき」p22参照 |
大阪府「屋外広告物のてびき」からの引用
2.許可申請(届出)手続き(大阪府の場合)
大阪府(政令指定都市、中核市を除く)で申請する場合の申請書類は以下のとおりです。書類の提出先は、広告物を掲出する場所の市役所又は町役場が基本となりますが、地域により異なるため下記の手引きp19を参照願います。
☞大阪府「屋外広告物のてびき」
【新規許可申請】
- 屋外広告物許可申請書(様式第1号 第3条関係)
大阪府土木事務所に提出する場合。市町等に提出する場合の様式は当該市町等で取り寄せます。 - 添付書類
現況カラー写真 | 設置場所がすべてわかるもので、現況を撮影したもの |
付近見取図 | 主要道路等を明示したもの |
図面関係 | ●配置図 ●平面図(建築物・広告物の両方を含んでいるもので、それぞれの位置関係がわかるもの ) ●立面図(建築物・広告物の両方を含んでいるもの) ●意匠図(着色したもの) ●構造図(建築物・広告物の両方を含んでいるもの) ●配線図(広告物自体に電気設備を使用する場合) ●その他の図面(必要に応じ土木事務所長が必要と認める図面) |
委任状 | 申請者が当該申請手続きを代理人に委任する場合 |
道路占用許可証(写) | 突出広告等で、道路等の上空を占用する場合 |
承諾書 | 広告物の設置場所が申請者以外の所有又は管理に属する場合。 |
その他の書類 |
- 屋外広告物しゅん工届出書(様式第9号 第13条関係)
なお、申請先によっては事前相談が必要となる場合があります。
許可が認められると許可書と許可証(許可済みシール)が交付されます。
許可の期間は2年以内、はり紙・立看板等は 30 日以内となっています。
【変更許可申請】許可を受けた屋外広告物に変更が生じた場合
- 屋外広告物変更許可申請書(様式第2号 第3条関係)
- 添付書類
現況カラー写真 | 変更となる広告表示面がすべてわかるもので、現況を撮影したもの |
変更の内容がわかる書類 | (新規許可申請添付書類参照) |
委任状 | 申請者が当該申請手続きを代理人に委任する場合 |
- 屋外広告物しゅん工届出書(様式第9号 第13条関係)
【変更届出】設置者等の商号名称・代表者氏名等が変わった場合
変更が生じた日から5日以内に届出書を提出します。
- 屋外広告物変更届出書(様式第10号 第14条関係)
【継続許可申請】許可を受けた屋外広告物を継続して許可を受ける場合
- 屋外広告物許可申請書(様式第1号 第3条関係)
- 添付書類
現況カラー写真 | 広告表示面がすべてわかるもので、現況を撮影したもの |
安全点検結果報告書 | 高さが 4mを超える広告物及び掲出物件の場合必要(屋上広告物、壁面広告物、建植広告物、突出広告物それぞれ別様式)有資格者(※2)による安全点検の結果を報告 |
委任状 | 申請者が当該申請手続きを代理人に委任する場合 |
道路占用許可証(写) | 突出広告等で、道路等の上空を占用する場合 |
承諾書 | 広告物の設置場所が申請者以外の所有又は管理に属する場合。 |
その他の書類 |
※2.安全点検の有資格者:屋外広告士、特殊電気工事資格者(ネオン工事に係るものに限る)、広告物の点検に関する技能講習会の修了者
許可申請手数料
区分 | 単位 | 手数料の額 |
アドバルーン | 1個 | 650円 |
広告幕 | 1枚 | 350円 |
立て看板 | 1枚 | 200円 |
はり紙又ははり札 | 100枚(※3) | 250円 |
広告塔又は広告板(※4) ①2㎡未満のもの ②2㎡以上5㎡以下のもの ③5㎡を超えるもの | 1件 | ①450円 ②1,000円 ③1,000円に、5㎡を超える面積が5㎡までごとに1,000円を加算した額 |
※3.はり紙又ははり札の枚数計算は、100枚に満たない端数を100枚とします。
※4.広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示された広告物を含む。
3.その他(大阪府の場合)
管理義務・安全点検
広告物の所有者、占有者、表示者、設置者、管理者は、公衆に対する危害の発生(※5)防止のため、広告物の補修その他必要な管理を怠らないようにしなければなりません。また、高さが 4mを超える広告物等の所有者又は占有者に対し、屋外広告士などの有資格者による安全点検の実施が義務付けられています。
※5.2015年2月に札幌かに本家ビル外壁の看板が落下し、歩行中の女性の頭部に当たり重体となる事故が発生しました。これを受け国交省は、2016年4月、屋外広告物の所有者等による点検の促進、許可更新等の申請を行う場合の点検結果の提出義務化等を内容とする屋外広告物条例ガイドラインを改正しました。
除却義務
許可期間、掲出期間が満了したときは、遅滞なく広告物又はこれを掲出する物件を除却しなければなりません。除去完了後は、撤去届を提出しなければなりません。
違反広告物に対する措置・命令
条例に違反した広告物については、その表示者や設置者、管理者に改修、移転、除却等の措置が命じられることがあります。また、これに応じないときは、強制的に除却されることがあります。
広告主の義務等
広告物の掲出を依頼した広告主にも、違反掲出を防止する義務があります。その義務に違反したときは、会社名等が公表されることがあります。
罰則
条例に違反した場合には、1 年以下の懲役や 50 万円以下の罰金などに処せられることがあります。また、違反行為を行った行為者だけではなく、雇用主や掲出を指示した者に対しても罰則の規定が適用されます。