建設業
許可
専任技術者の実務経験について
投稿日 2024年10月8日 最終更新日 2024年10月8日
建設業許可の技術力の要件として営業所ごとに常勤の専任技術者を選任することが求められています。この専任技術者については、たとえ所定の学歴や国家資格等がなくても、10年の実務経験があれば、その経歴を活用し選任することができます。
とはいえ、実務経験にはいくつかの制約が伴います。また、その証明方法についても申請先行政庁のルールに従わなくてはなりません。ここでは、この実務経験について誤解されやすい点や特に留意すべき点などを中心に解説します。
1.実務経験の内容
建設業許可における実務経験とは、(許可を受けようとする建設業の)建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験のことをいいます。
従事した職務
実務経験には建設機械の操作によって実際に建設工事の施工に携わった経験等はもちろん、これらの技術を習得するためにした見習い中の技術的経験も含まれます。また、この経験は請負人の立場における経験に限らず、建設工事の注文者側において設計に従事した経験や現場監督としての経験も含まれます。
許可を受けようとする業種と経験した工事の業種区分の一致
許可を受けようとする建設業の業種と経験した工事の内容が一致しない場合は、許可を受けたい建設業の実務経験として認められないため、法令上の業種区分には注意が必要です。一見すると同じような工事であっても業種区分が異なっているものがあります。(※1)
- 鉄骨を組み立てる工事
◇鉄骨の製作、加工から組立てまでを一貫して請け負う工事
→鋼構造物工事における鉄骨工事
◇既に加工された鉄骨を現場で組立てることのみを請け負う工事
→とび・土工・コンクリート工事における鉄骨組立工事 - 防水工事
◇トンネル防水工事等の土木系の防水工事
→とび・土工・コンクリート工事
◇建築系の防水工事
→防水工事 - 一方、防水モルタルを用いた防水工事などは、左官工事業、防水工事業どちらの業種の実務経験としても認められます。
※1.建設工事の種類と例示、および業種区分の考え方については、国交省の「建設業許可事務ガイドライン」を参照してください。
機械器具設置工事の実務経験について
特に注意したいのは、機械器具設置工事の実務経験です。機械器具設置工事には広くすべての機械器具類の設置に関する工事が含まれるため、機械器具の種類によっては電気工事、管工事、電気通信工事、消防施設工事等と重複するものがあります。これらについては原則として電気工事等それぞれの専門の工事に振り分けることになっているため、いずれにも該当しない場合や複合的な機械器具の設置の場合でしか機械器具設置工事に該当させることができません。(また、完成品の機械器具をクレーン等で設置するような場合はとび・土工・コンクリート工事になります。)そのうえ、実務経験の証明の場面においては、これらに該当するかどうかが注文書や請求書のみで判別がつかないことが多く、機械のカタログや説明図などの資料が別途必要になる場合があります(許可行政庁への事前相談をお勧めします)。
電気工事、消防施設工事、解体工事での実務経験
電気工事と消防施設工事については、電気工事士法や消防法等により、それぞれ電気工事士免状や消防設備士免状等の交付を受けた者等でなければ、一定の工事に直接従事できません。従って、資格取得以前の期間を実務経験にカウントすることはできません。
また、解体工事については、建設リサイクル法施行後(H30.5.30)は、軽微な建設工事であっても同法に基づく解体工事業登録が必要となるので、登録業者が行った工事以外での経験(建設業許可業者(土建と解)での経験を除く)は認められません。
指導監督的実務経験
特定建設業の専任技術者になるには、一般建設業の要件を満たしたうえで、さらに2年の指導監督的実務経験が必要になります(指定建設業7業種を除く)。
指導監督的実務経験とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。この指導監督的実務経験は、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、 発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものに関する2年以上の経験とされています。
なお、指導監督的実務経験は、発注者から直接請け負った建設工事に関する経験のみを認めるものなので、発注者側の経験や下請負人としての経験を含むことはできません。
2.実務経験年数の考え方
実務の経験の期間は、具体的に建設工事に携わった実務の経験を対象とし、当該建設工事に係る経験期間の積み上げにより算出される合計期間となります。
期間の重複は認められない
経験期間が重複しているものについては原則として二重に計算することはできません(※3)。
しかし、工事によっては、複数の業種の施工を同時並行で行うことがあります(電気工事業と電気通信工事業、塗装工事と防水工事など)。この場合の実務経験年数は、1業種分の実務経験しか認めてもらえないので、2業種分の実務経験を認めてもらおうとするならば、期間の重ならない別々の工事でそれぞれの実務経験を認めてもらうしかありません。
※3.平成28年5月31日までの間にとび・土工工事業の許可を得て請け負った解体工事に係る実務経験の期間については、平成28年6月1日以降、とび・土工工事業及び解体工事業双方の実務経験の期間として二重に計算することができます。
実務経験の振替
許可を受けようとする業種について8年以上の実務経験、その他の業種について4年以上の実務経験、合計年数が12年以上あれば、異なる業種間での実務経験の振替が認められ専任技術者になることができます。ただし、異なる業種間での実務経験の振替えが認められるのは以下の場合に限られます。(建設業法施行規則7条の3二号)
① 一式工事から専門工事への実務経験の振替えを認める場合
(4年以上) | 許可を受けようとする業種(8年以上) | |
土木一式 | → | とび・土工・コンクリート、しゅん、水道施設、解体 |
建築一式 | → | 大工、屋根、内装、ガラス、防水、熱絶縁、解体 |
とび・土工 | → | 解体 ※H28.6.1以降は不可 |
注)矢印の方向に向かってのみ振替可。 右枠内の業種間の振替不可
② 専門工事間での実務経験の振替えを認める場合
大工 | ←→ | 内装 |
3.国家資格等について
国土交通大臣が認定した資格の中には、そのまま専任技術者になれるものもあれば、合格後(あるいは免状交付後)一定期間の実務経験が求められるものもあります。(施工管理技士補、第二種電気工事士、2級建築大工技能士など)この場合の実務経験の内容や実務経験年数の考え方は、上記1、2.と同じです。
【参考】 ☞「建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧」
※表中の枠内の数字が、資格取得後必要な当該業種の実務経験年数となります。
弊所HP☞「大学・高校の指定学科卒業者と同等とみなされる施工管理技術検定合格者」
※令和5年7月の省令改正により、施工管理技士第一次検定合格者の実務経験年数が大学高校の指定学科卒業者と同等(3年、5年)とみなされることになりました。
4.実務経験の証明
証明者
証明者は、勤務先の使用者が原則です。勤務先が法人の場合は代表者、個人の場合は当該本人が証明者となります。実務経験期間が複数の勤務先にわたる場合は、それぞれの使用者から実務経験を証明してもらう必要があります。また、その使用者が建設業の当該業種の許可業者であるか、無いかによって求められる書類の種類も変わります。
過去の常勤性の証明
さらに、それぞれの勤務先について在籍していたことを確認できる書類(年金の被保険者記録照会回答票など)が求められます。
実務経験証明書の記載方法や確認資料について
申請時に必要となる実務経験証明書(様式第9号)、指導監督的実務経験証明書(様式第10号)の記載方法や疎明資料(確認資料)は、申請先行政庁ごとにルールが違っているので申請先の手引き等を必ず確認するようにしてください。
因みに、大阪府については、令和6年11月1日以降、実務経験証明書の記載方法や確認書類等が変更されています。(下記参照)
☞「建設業許可申請の手引き」等の改定について(令和6年9月30日)