建設業
コンプライアンス
フロン排出抑制法と解体工事業者、廃棄物処理業者の責務について
投稿日 2025年2月1日 最終更新日 2025年2月1日
フロン類(※1)の回収については、家庭用エアコンや冷蔵・冷凍庫は家電リサイクル法の規制を、カーエアコンは自動車リサイクル法の規制を受けますが、業務用エアコンや冷蔵・冷凍機器(業務用冷凍空調機器)のうち冷媒としてフロン類が使用されているものは、フロン排出抑制法の規制を受けることになります。
業務用冷凍空調機器の所有者は、あらかじめ機器からフロン類を回収しておかなければ、廃棄物・リサイクル業者(産業廃棄物処理業者や金属スクラップ卸売業者など)へ機器を引渡すことはできません。この際、フロン類の回収を認められているのは、都道府県知事の登録を受けたフロン類充填回収業者だけとなるので注意が必要です。
また、廃棄物・リサイクル業者は、フロン類充填回収業者が交付した回収証明書を確認したうえでなければ当該機器の引取りをすることはできません。
建築物の解体を行う場合、発注者から直接工事を請負った元請け業者は、解体する建物に業務用の冷凍空調機器があるかを事前に確認し、その結果を記載した書面(事前確認書)を発注者に渡して説明することが求められます。
※1.フロン類とは、フッ素と炭素などの化合物で、オゾン層を破壊し温室効果も大きい特定フロン(CFC、HCFC)、オゾン層を破壊しない代替フロン(HFC)があります。代替フロンは、オゾン層を破壊しないものの、二酸化炭素の数十倍から10,000倍以上の大きな温室効果をもつことから2019年4月以降は輸入や製造が規制されています。
1.フロン排出抑制法による機器廃棄時の規制
- 制度の対象=第一種特定製品
第一種特定製品とは、業務用の空調機器(エアコン)及び冷凍冷蔵機器であって、冷媒としてフロン類が使われているものをいいます(カーエアコンは第二種特定製品であるため除かれます)。これらは、フロン類を回収後も第一種特定製品として取り扱う必要があります。
- 関係者の役割・責務
法律上の名称 | 該当者 | 役割・責務 |
第一種特定製品の管理者(廃棄等実施者) | 機器の所有者など | ・第一種フロン類充塡回収業者へのフロン類の引き渡し ・フロン類の回収、再生、破壊等に必要な費用の負担 など |
第一種フロン類充填回収業者 | 都道府県知事の登録を受けた者 | ・充塡・回収に関する基準の遵守・廃棄時等にフロン類を引き取った場合は、引取証明書を交付(充塡・整備時回収の際は、第一種特定製品管理者への充塡・回収証明書の交付) ・当該書面の写しを3年間保存 ・回収したフロン類の再生業者又は破壊業者への引き渡し など |
特定解体工事元請業者 | 建設・解体業者(建物解体工事を発注者から直接請け負う者) | ・第一種特定製品の有無について事前確認を行い、発注者に対して事前確認書を交付して説明 ・当該書面の写しを3年間保存 など |
第一種特定製品引取等実施者 | 廃棄物・リサイクル業者、設備業者(下取り) など | ・引取証明書の写しによりフロン類の回収が確認されない第一種特定製品の引取り禁止 ・引取証明書の写しを3年間保存 など |
フロン類再生業者 フロン類破壊業者 | 環境大臣及び経済産業大臣の許可を受けた者 | ・再生・破壊に関する基準の遵守 ・第一種フロン類充塡回収業者に再生・破壊証明書を送付 ・当該書面の写しを3年間保存 など |
※全ての者は、フロン類をみだりに放出した場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
- 機器廃棄時の工程管理制度
機器廃棄時のフロン類の流れは、行程管理制度により書面で管理されます。機器の廃棄等を行う管理者(第一種特定製品廃棄等実施者)は、機器を廃棄する際、フロン類を充塡回収業者に引き渡すか、設備業者や解体業者等にフロン類の引渡しを委託するよう定められており、行程管理票(回収依頼書、委託確認書、再委託承諾書)の交付とその写しの保存(3年)、充塡回収業者から交付される引取証明書、確認証明書の保存(3年)を引渡し方法に応じて行う必要があります。
- 【機器廃棄時等のフロン類の回収】
※環境省・経済産業省「フロン排出抑制法の概要」からの引用
2.建設・解体業者の責務
建設・解体業者には、特定解体工事元請業者として、以下の対応が求められます。
- 解体する建物において第一種特定製品(業務用のエアコン・冷凍冷蔵機器など)の有無を事前確認し、その結果を書面(事前確認書)で発注者に説明 (その書面の写しを3年間保存)
- フロン類の回収を充塡回収業者に依頼(工事の発注者から充塡回収業者へのフロン類引渡しを受託した場合)
- フロン類が回収されていることを確認し、廃棄物・リサイクル業者に機器を引渡し
※ビル・商業施設の解体工事を依頼された場合のフローチャート
☞「建設・解体業者の皆様へ フロン排出抑制法の改正により(2020年4月施行)建物解体時の規制が強化されました。」環境省・経済産業省
3.産業廃棄物処理業者の責務
廃棄物・リサイクル業者(設備業者が下取りをする場合も含む)は、フロン類の回収等が確認できない第一種特定製品を引取り等することは禁止されています。(違反して引取り等を行った場合は直罰の対象)
具体的には、以下の場合に引取りが可能となります。
- 引取証明書の写しを受け取った場合
充塡回収業者が交付する引取証明書の写しが機器に添えられており、フロン類が回収済みであることを確認できる場合(引取証明書の写しは、3年間保存する必要があります。)
- 自らフロン類を回収する場合
充塡回収業者登録を行っている場合、自らフロン類の回収の依頼を受けることも可能です。このとき、管理者が交付する、フロン類の回収依頼書が機器に添えられている必要があります。(このとき、フロン類回収後に管理者(廃棄等実施者)に対して引取証明書の原本を交付するとともに、引取証明書の写しを3年間保存する必要があります。)
- 充塡回収業者へのフロン類の引渡しを委託された場合
管理者 (廃棄等実施者)から、フロン類の充塡回収業者への引渡しを依頼され、 委託確認書の交付を受けた場合は引取り可能です。 この場合、フロン類の回収を委託した充塡回収業者から引取証明書の 写しの交付を受ける必要があります。
- フロン類が充塡されていないことを示す確認証明書の写しを受け取った場合
充塡回収業者が交付する、フロン類がその機器に充塡されていないことを確認する確認証明書の写しが機器に添えられており、フロン類が充塡されていないことを確認できる場合は引取り可能です。
【参考】
☞「フロン類の使用の合理化及び 管理の適正化に関する法律 (フロン排出抑制法)環境省・経済産業省・国土交通省」
☞「令和5年度フロン排出抑制法に関する説明会 資料 環境省」