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建設業者に古物商の許可は必要か

投稿日 2025年2月8日 最終更新日 2025年3月4日
「機械設備の設置と引き換えに下取りした機械類(※1)」や「解体工事現場で排出される鉄スクラップ(※2)」などを他者に売却する場合、古物商の許可をとった方がいいのか相談を受けることがあります。
古物商の許可が必要かどうかは、古物営業法の目的を押さえたうえで、取り扱う品目が古物に該当するか、またその取引が古物営業に該当するかを検討することで比較的容易に判断できます。
(実は、建設業者が許可を必要とするケースは意外と多くありません。)
この記事では、古物商の許可が必要となる場合や古物商許可の申請方法について解説します。
※1.許可が必要ではない場合と必要になる場合があります。(詳細は本文参照)
※2.古物商の許可は必要ありません。ただし、道府県によっては条例で金属くず商の許可が必要になる場合があります。(本文参照)
1.古物営業法について
- 古物営業法の目的
古物営業法は、その目的を理解することが重要です。
目的 | 窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。 |
- 古物とは
一度使用された物品若しくは使用されない物品(いわゆる新古品)で、使用(リユース)のために取引されたものをいいます。(これらの物品に修理・再生等幾分の手入れをしたものも含まれます。)
古物は、省令で以下の13品目に分類されています。
【古物に該当するもの・・13品目】
①美術品類 ②衣類 ③時計・宝飾品類 ④自動車 ⑤自動二輪車及び原動機付自転車 ⑥自転車類 ⑦写真機類 ⑧事務機器類 ⑨機械工具類 ⑩道具類 ⑪皮革・ゴム製品類 ⑫書籍 ⑬金券類 |
【古物に該当しないもの・・13品目に該当しないもの】
・大型機械類(船舶、航空機、鉄道車両) ・容易に取り外すことができない状態で土地又は建造物に固定して用いられる機械で重量が1トンを超えるもの ・重量が5トンを超える機械(船舶を除く)であって、自走することができるもの及びけん引されるための装置が設けられているもの以外のもの |
- 古物営業とは
古物の「売買」「交換」「委託を受けて売買」「委託を受けて交換」を行う営業をいい、①古物商(1号営業)②古物市場主(2号営業)③古物競りあっせん業(3号営業)に分類されます。
また、ここでいう古物営業の営業者は、営利を目的とする者に限られます。営利を目的としない者は、たとえ、その営業内容が上記1号から3号の営業と同様であっても、許可又は届出の必要はありません。(営利目的があるか否かは、本人の意思ではなく、一連の行為を包括的にみて利益をあげ得るものかで客観的に判断されます。)
- 古物商の許可が必要な場合
取り扱う品目が「古物」に該当し、かつ、その取引が「古物営業」に該当する場合は、許可(1,2号営業)又は届出(3号営業)が必要になります。
2.古物商の許可を必要としない場合
- 自分の物を売る場合
自分のものを売る場合は許可を必要としません。自分が売った相手から売った物を買い戻す場合も同様です。
- 原材料になるものの取引
鉄スクラップなどは、状態によっては買取(有価物として引取る)が可能な場合がありますが、その鉄スクラップを本来の用法で再使用(リユース)する場合は古物に該当しうると考えられますが、再資源化(リサイクル)する場合は、古物には該当しないので古物商の許可は不要です。ただし、この場合、大阪府では、金属くず商の許可が必要になる場合があるので要注意です。
☞弊所ブログ「建設廃棄物の金属くずを有償で買い取る場合に必要な許可(金属くず商)について」
- 古物を売却することのみを行う営業
古物から収入を得る目的で古物の買い取りを行う場合は、古物営業に該当し古物商の許可が必要になります。(※3)
一方、無償又は引取料を徴収して引き取った古物を販売する場合は、古物を売却することのみを行う営業(法2条2項①)として許可は必要ありません。
※3.具体的には、①古物を買い取って売る ②古物を買い取って修理して売る ③古物を買い取って使える部品などを売る ④古物の委託販売 ⑤古物を別のものと交換する ⑥古物を買い取ってレンタルする・・・などの場合です。
- 下取り時に「サービスとして行う値引き」
新品を販売する業者が、下取りとして古物を引き取る場合、当該行為が、いわゆる「サービスとして行う値引き」として以下の要件をすべて満たすときは、古物商の許可は必要ありません。
形式的要件 | 下取りした古物の対価として金銭等を支払うのではなく、販売する新品の本来の売価から一定金額が差し引かれる形での経理上の処理が行われていること |
実質的要件 | ① 下取りが、顧客に対するサービスの一環であるという当事者の意思があること ② 下取りする個々の古物の市場価格を考慮しないこと |
一方、下取りする古物の市場価格を考慮した新品商品の値引きを業として行う場合は、古物営業に該当し許可が必要になります。
【参考】☞「古物営業関係法令の解釈基準等 警察庁」
3.古物商の申請手続き
- 人的要件
営業所ごとに必ず1名の常勤の管理者(責任者)を配置する必要があります。管理者には実務経験や資格は求められません(※4)が、欠格要件が定められているため確認が必要です。
※4.美術品や自動車を取扱品目として申請する場合は、経験等を問われる可能性があります。
- 物的要件
古物の買取や仕入れなどの拠点となる営業所が必要です。(賃貸物件の場合は賃貸借契約の使用目的の確認が必要です。例:住居専用→×)
- 申請先
営業所の所在地を管轄する公安委員会(警察署)となります。他の都道府県に営業所を新たに増やす場合であっても、事前に営業所の新設を内容とする届出及び変更の管理者の届出を行えば足ります。
- 申請書類(大阪府の場合)
必要書類 | 個人 | 法人 |
許可申請書及び別記様式 | 〇 | 〇 |
法人の登記事項証明書 | - | 〇 |
法人の定款 | - | 〇 |
住民票 | 〇本人と営業所の管理者 | 〇監査役以上の役員全員と営業所の管理者 |
身分証明書 | 〇同上 | 〇同上 |
略歴書 | 〇同上 | 〇同上 |
誓約書 | 〇同上 | 〇同上 |
URLを届け出る場合は、プロバイダ等からの資料のコピー | 必要な場合有 | 必要な場合有 |
※申請手数料19,000円。標準処理期間40日。
参照☞大阪府警察「古物商許可申請」のHP
- 古物商の義務
古物商には、「取引相手の真偽の確認義務」「取引記録の保存義務(古物台帳等に記録し3年間保存)」「不正品等発見時の警察官への通報義務」(三大義務)があります。さらに、営業所の見やすい場所に所定の様式の標識を掲げなければなりません。
ホームページを利用している場合は、ホームページを利用した取引を行っているか否かに関わらず、古物商は自社(自身)の管理するサイトに、氏名等(氏名又は名称、許可をした公安員会の名称、許可証番号)を掲載することが義務づけられてます(従業者5名以下の古物商を除く)(法12条2項)。