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コラム

2025.10.07

建設業

法人設立/事業承継

建設業を営む個人事業者の会社化の進め方

投稿日 2025年10月7日 最終更新日 2025年10月7日

  個人で始めた事業でも、事業が拡大し一定規模以上になってくると、会社化(法人化)が視野に入ってきます。会社化により、事務や金銭上の負担が増えます(決算書作成、社会保険手続き、社会保険料負担など)が、税制上のメリット(節税効果)を受けることができるうえ取引先からの信頼度アップも期待できます。
 建設業を営む個人事業者にとって避けて通れないのは、仕事をするうえで必要な許認可手続きとの関係です。すでに許可を取得している場合は、許可の空白期間が生じないように進めていく必要があります。また、許可がない場合であっても、将来の許可取得を見越した会社の設計が必要です。
 当ブログでは、弊所の実際の相談事例をもとに、法人化の進め方や注意点などについて紹介します。

1.相談事例

※実際の内容に一部変更を加えています。

問合せ電話による問合せ 初回面談10月末
相談者・個人の解体工事業者(大阪府の解体工事業登録)建設業許可なし・本人は解体工事施工技士資格を保有・業歴5年・従業員数(代表者含め)5名 (全員が社会保険・雇用保険に加入)・個人で産業廃棄物収集運搬業(積替え保管なし)許可取得済み
相談内容・大きな案件が入りそうなので、2月末までに建設業(解体工事業)の許可を取得したい。・近い将来の法人化も見据えている。
弊所の回答・法人化を先行し、法人としての建設業許可取得をお奨めする。(理由は下記のとおり)

 この相談者の場合、建設業許可取得の要件はクリアされていました。

 個人事業主として先に許可を取得し、その後、建設業許可の「認可の制度」を利用することで、許可を切らすことなく法人化することは可能です。(認可に行政手数料は不要。)許可番号や営業年数も個人事業主時代のものを引き継ぐことができます。とはいえ、認可の制度を利用するためには事前に行政庁との打合せが必要であり、事業移管(社会保険の移行を含む)のスケジュールも制約を受け、事業譲渡契約又は株主総会議事録の作成など余分な作業も発生します。

 しかし、この相談者の場合、現状すでに法人化のメリットが期待できるだけの売上(所得)に達しておられました。また、面倒な税務会計の処理は税理士に任されていました。そのため、弊所からは、法人化を先行し、法人設立後間を置かずに建設業の許可を取得してはどうかと提案させていただきました。法人化に要する日数で1か月程度、建設業許可取得に要する日数で1~2か月程度です。計画的に進めれば、「大きな案件」に間に合います。

 法人化から許可取得までを事業を止めることなく一気にすすめるための労力とコストが集中的に発生しますが、長い目で見ると労力やコストは最小化されます。何より法人化による事業機会や節税効果を先取りできるのは大きなメリットです。

 なお、廃棄物収集運搬業には、建設業のように個人から法人へ許可を承継する制度がないので、法人として新たに許可を取得する必要があります。ただ、大阪府の場合、新規許可申請の際に「法人成申立書」を提出することで、個人事業から法人へと切れ目なく許可を引き継ぐことができます。(個人事業との運搬車両の重複、更新の講習会終了証での新規申請が認められます。ただし、法人の許可証交付後は、個人の廃業届を出さなければなりません。)

 また、解体工事業については、建設業の許可取得後に個人の廃業届を提出すれば足ります。

2.全体スケジュール

 相談者から弊所の提案どおり進めたいとのご依頼を受けましたので、まずは、会社設立から許可取得までのスケジュールを立てました。

 大まかなイメージとしては、まず、会社という箱を作ります。次に、目標日(許可取得日)から逆算して事業を個人から法人に移管(譲渡)する日(Ⅹデー)を決めます。Ⅹデーに向け箱(会社)に事業という中身を入れる作業を進めます。Ⅹデー以降に行政へ許可申請・・・という流れです。

 産廃収集運搬業については、申請から許可取得までに60日かかるため、会社設立後速やかに申請します。建設業許可は、社会保険や雇用保険への加入が要件になっているので、Ⅹデー以降に申請するしかありません。ただし、こちらの方は許可取得までに30日です。

 従業員や棚卸資産以外の事業資産や負債(減価償却資産、不動産、貸付金、借入金など)の引き継ぎについては、税理士ともよく相談して、無理なく進めるのが肝要です。トラックや重機、土地家屋など金額の大きいものは、個人から賃借する(又は、持主と交渉のうえ転貸借、賃借人の変更など)という選択肢も考えられます。

日程項目留意点など
11月上旬会社の基本事項の決定依頼者からヒアリング
商号、目的等の確認・調査商号調査(商号が他者と重複していないか)確認後、会社代表者印作成依頼
11月中旬定款案の作成依頼者に内容確認
定款内容を公証人に確認確認後、定款認証日の予約
11月下旬定款認証公証役場
資本金の振込
設立登記(法務局)司法書士に依頼
12月中旬登記完了登記申請から1~3週間
税務署・府税事務所・市役所への法人設立の届出など税理士に依頼。副本(メール詳細付き)が許可取得に必要
会社の預金口座の開設
役員報酬の決定株主総会議事録作成
12月中~下旬取引先への周知、業務移管手続き(契約のまき直し、債権債務の精算方法など)の打合せ資金借入先、家主、リース会社、保険会社、元請・協力会社など
12月下旬法人の産廃許可申請(新規)
1月上旬事業移管(事業譲渡)(1月1日付)事業、棚卸資産、従業員
従業員の社会保険(健康保険、厚生年金保険)加入(変更)手続き(年金事務所)社労士に依頼
労働保険加入手続き(労基署、ハローワーク)同上
建設業許可申請(新規)
2月上旬建設業許可取得解体工事業の廃業届申請から30日後
2月下旬産廃業許可取得(法人)産廃業廃業届(個人)申請から60日後
その他(1月1日以降)事業資産の引き継ぎ(減価償却資産、不動産、借入金などの負債)減価償却資産と不動産は譲渡又は賃貸。借入金などの負債は、個別に検討
個人事業の廃業届など(税務署)法人の産廃許可取得後、かつ、個人の債権債務(税金含む)精算後

3.会社の基本事項の決定

 会社を設立するにあたり、以下の基本事項について必ず決めておく必要があります。 

①商号(社名)②本店所在地 ③目的(事業内容) ④資本金(一株当たりの発行価額×設立時発行株式総数) ⑤発行可能株式総数 ⑥株式の譲渡制限等 ⑦会社設立予定日 ⑧事業年度 ⑨公告方法 ⑩発起人 ⑪役員 ⑫取締役・監査役の任期 

 

 基本事項の決定にあたり、建設業者として留意すべき点は以下のとおりです。

  • ④資本金

可能であれば、建設業許可の財産要件である500万円以上としておく。(500万円に満たない場合は、500万円以上の預金残高証明を準備する必要があります。)

  • ③目的

「解体工事業」など建設業の具体的な業種や建設工事の種類が特定できる文言でも構わないが、今後の事業範囲の拡大も見越して、「建設業」「土木建築工事請負」などの文言を入れておくようにする。(大阪府の場合、これで建設業全29業種に対応可能。)また、項目の最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」を必ず入れておく。(大阪府の場合、産業廃棄物収集運搬業は附帯関連業務として認められる。

  • ⑪役員

「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」の予定者は、必ず役員としておく。

会社に後継者がいる場合は、役員に入れておいた方がよい。(在任期間5年で常勤役員等の要件を満たすことができるため)

  • ⑧事業年度(決算日)
    将来の経営事項審査の受審を見据え、会社の総資本額が少なくなる月にしておく。

3.申請書類の軽減(大阪府の場合)

 一般に、許可申請書類は、法人として申請する場合、個人事業主として申請する場合よりも多くなる傾向にあります。しかし、設立後すぐ申請する場合は、以下の書類(書類上の記載を含む)を省略することができます。

  • 建設業許可の場合
様式第十二号(工事経歴書)「実績なし」と記載し提出
様式第三号(直前3年の各事業年度における工事施工金額)「実績なし」と記載し提出
建設業財務諸表「開始貸借対照表」のみ提出
法人事業税の納税証明書不要

※ただし、「法人設立等申告書(大阪府税事務所)」の写しが必要です。

  • 産業廃棄物収集運搬業(積替え保管なし)の場合
納税証明書(法人税)不要
確定申告書の写し(直近3年分)不要
貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表(いずれも直近3年分)不要

※ただし、「法人成り申立書」「開業届の写し(税務署提出)」が必要です。

  

 法人設立、建設業許可取得、産業廃棄物収集運搬業許可取得をお考えの場合は、当事務所にご相談ください!

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