建設業
コンプライアンス
特定建設作業(騒音、振動)実施の届出について
投稿日 2024年1月23日 最終更新日 2024年1月23日
建設工事のうち、くい打機を使用する作業など騒音や振動が著しい作業については、騒音規制法や振動規制法で特定建設作業とされ、市町村長への届出が必要です。また、工事に際しては、定められた基準を遵守して行なうことが求められています。
なお、地方公共団体によっては、条例により、いわゆる上乗せ・横出しの規制(規制対象・規制地域の拡大、対象作業の拡大、厳しい基準値の設定など)を行っている場合が多い(※1)ため、実施の届出に当たっては工事の区域を管轄する都道府県及び市町村に確認しておく必要があります。
ここでは、大阪府で特定建設作業を実施する場合について解説します。
※1.騒音振動規制は歴史的に、いくつかの都道府県等において条例による規制が法規制に先行して導入されてきたという経緯があり、法は条例との関係において既存の条例規制に配慮していると言われています(騒音規制法27条、振動規正法23条)。
1.届出が必要な特定建設作業
以下の特定建設作業を規制地域内で行う場合は、法(騒音規制法、振動規正法)又は大阪府生活環境の保全等に関する条例に基づく届出が必要です。
◆騒音に係る特定建設作業
特定建設作業の種類 | 法の規制地域(※4) | 条例の追加規制地域(※5) |
①くい打機(もんけんを除く)、くい抜機又はくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く)を使用する作業(くい打機をアースオーガー と併用する作業を除く) ②びょう打機を使用する作業 ③さく岩機を使用する作業(※2) ④空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるものであって、その原動機の定格出力が15キロワット以上のものに限る)を使用する作業(さく岩機の動力として使用する作業を除く) ⑤コンクリートプラント(混練機の混練容量が0.45立方メートル以上のものに限る)又はアスファルトプラント(混練機の混練重量が200キログラム以上のものに限る)を設けて行う作業(モルタルを製造するためにコンクリートプラントを設けて行う作業を除く) ⑥バックホウ(原動機の定格出力が80キロワット以上のものに限る) を使用する作業(※3) ⑦トラクターショベル(原動機の定格出力が70キロワット以上のものに限る)を使用する作業(※3) ⑧ブルドーザー(原動機の定格出力が40キロワット以上のものに限る)を使用する作業(※3) | 法の届出 | 条例の届出 |
⑨ ⑥⑦又は⑧に規定する作業以外のショベル系掘削機械(アタッチメ ントをスケルトンバケットに換装したものを含み、原動機の定格出力が20キロワットを超えるものに限る)、トラクターショベル又はブルドーザーを使用する作業 ⑩コンクリートカッターを使用する作業(※2) ⑪鋼球を使用して建築物その他の工作物を破壊する作業 | 条例の届出 | 条例の届出 |
◆振動に係る特定建設作業
特定建設作業の種類 | 法の規制地域(※4) | 条例の追加規制地域(※5) |
①くい打機(もんけん及び圧入式くい打機を除く)、くい抜機(油圧式くい抜機を除く)又はくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く)を使用する作業 ②鋼球を使用して建築物その他の工作物を破壊する作業 ③舗装版破砕機を使用する作業(※2) ④ブレーカー(手持式のものを除く)を使用する作業(※2) | 法の届出 | 条例の届出 |
⑤ブルドーザー、トラクターショベル又はショベル系掘削機械(原動機 の定格出力が20キロワットを超えるものに限る)を使用する作業 | 条例の届出 | 条例の届出 |
- ※2.作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が 50メートルを超えない作業に限る。
- ※3.一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして騒音規制法施行令別表第2の規定により 環境大臣が指定するもの(国土交通省が低騒音型建設機械として指定したものが該当)を使用する作業を除く(この場合は⑨の条例での届出を行うことになります)
- ※4.法の規制地域:第1・2種低層住居専用地域、第1・2種中高層住居専用地域、第1・2種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、用途指定のない地域、工業地域
- ※5.条例の追加規制地域:工業専用地域の一部、大阪国際空港のうち豊中市及び池田市の区域並びに八尾空港の敷地、法第3条第1項の指定地域の境界から300m以内の地先及び水面
- なお、高槻市については、大阪府生活環境の保全等に関する条例102条の2及び同施行規則75条の2で同条例と同等以上の効果が得られる市町村条例を有するものとして同条例の適用から除外されています。
【参照】☞高槻市「特定建設作業の届出のしおり」
2.届出について
建設工事を施工しようとする元請業者は、特定建設作業開始の7日前(中7日あける)までに市町村長あてに工事実施の届出をしなければなりません。
届出書類(大阪市の場合)
- 特定建設作業実施届出書(工事の種類ごとに必要)
- 添付書類
①騒音・振動の防止方法
②周辺の状況の見取図(工事現場等を明記)
③特定建設作業および建設工事の工程表 (作業休業日を明記したうえ、全ての作業期間を記載)
④ 次の条件の場合、必要な書類
・夜間、日曜日及びその他の休日に作業を実施する場合:道路使用に関する許可等の書類
・届出者に代表権がない場合:委任状(写しでも可)
・会社が管財人の管理下にある場合:管財人の委任状(写しでも可) - 提出部数
特定建設作業の種類ごとに「正本1部、写し1部」の計2部 - 提出方法
大阪市行政オンラインシステムにより電子申請を行うか、受付窓口又は郵送
3.施工時に遵守すべき基準
特定建設作業を伴う建設工事を施工するときには、法や条例に定める規制の基準 を遵守しなければなりません。
◆特定建設作業に係る規制基準
規制内容 | 区域区分 | 規制基準 |
特定建設作業の 敷地境界上における基準値 | 1号、2号 | 騒音85デシベル、振動75デシベル |
作業可能時刻 | 1号 2号 | 午前7時から午後7時 午前6時から午後10時 |
最大作業時間 | 1号 2号 | 一日当たり10時間 一日当たり14時間 |
最大作業期間 | 1号、2号 | 連続6日間 |
作業日 | 1号、2号 | 日曜日その他の休日を除く日 |
(注)区域区分について
- 1号区域:第1・2種低層住居専用地域、第1・2種中高層住居専用地域、第1・2種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、用途指定のない地域、工業地域及び条例の追加規制地域(前表※5)のうち学校、保育所、病院、入院施設を有する診療所、図書館、特別養護老人ホーム及び幼保連携型認定こども園の敷地の周囲80メート ルの区域内の地域
- 2号区域:工業地域及び条例の追加規制地域(前表※5)のうち1号区域以外の地域
4.罰則・努力義務等
- 改善勧告及び改善命令
規制基準が守られておらず、周辺の生活環境が著しく損なわれる場合には、騒音・ 振動の防止等について、改善勧告、改善命令を受けることがあります。
- 罰則
虚偽の届出など適切な届出をしない場合や、検査を拒み妨げる場合、改善命令に従わない場合には、懲役、罰金又は過料が科せられます。従業員等が業務に関して違法行為を行った場合は、行為者の他に経営者に対しても罰金が科されます。
- 施工者の努力義務
建設作業を実施する場合は、低騒音型建設機械、低振動型建設機械や工法を採用す るなどして、周辺の生活環境を保全するよう努めることとされています。また、事前の周辺住民への作業内容の説明も重要です。