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特殊車両通行許可制度について
投稿日 2024年4月11日 最終更新日 2024年4月23日
道路を保全し、または交通の危険を防止するため、道路を通行する車両(積載された貨物も含みます)の大きさや重さは、道路法によりその最高限度が決められています。建設機械や建築資材の運搬車、自走型の建築機械(トラッククレーンなど)の中には、この最高限度を超えてしまうものがありますが、これらの車両を通行させるには道路管理者による特殊車両通行許可が必要です。
また、令和4年4月からは、事前登録された車両について、道路情報が電子化された道路を対象にオンラインで即時に通行が可能となる特殊車両通行確認制度も始まりました。
1.道路法に基づく通行車両の制限
道路法に基づく車両の制限とは
我が国の道路は、道路法の道路構造令により一定の構造基準により造られています。一方で、道路を通行する車両の大きさや重さの最高限度は道路法の車両制限令で定められています。道路を通行する車両の大きさや重さの最高限度のことを一般的制限値といいます。
原則として下記の制限値を一つでも超える車両は、通行許可が必要です。(道路交通法の制限値を超える場合には、通行許可とは別に警察署長による制限外積載許可も必要になります。)
【車両制限令の一般的制限値】
この制限値は、人が乗車し、貨物が積載されている場合にはその状態におけるものをいい、他の車両をけん引している場合にはけん引されている車両も含みます。
車両の諸元 | 一般的制限値(最高限度) | 【参考】道路交通法施行令 |
幅 | 2.5m | 貨物は車両の幅以内 |
長さ | 12m 但し、高速(高速自動車国道)はセミトレーラ連結車で16.5m、フルトレーラ連結車で18m | 貨物は車両の長さの10%以内 |
高さ | 3.8m、但し、高さ指定道路は4.1m | 貨物+荷台で3.8m(高さ指定道路は4.1m) |
総重量 | 20t、但し、高速・重さ指定道路は軸距、車長に応じて20~25t(連結車には特例あり) | 積載物の重量は車検証等に記載の最大積載量を超えてはならない。 |
軸重 | 10t | ー |
隣接軸重 | 18t:隣り合う車軸の軸距が1.8m未満 19t:隣り合う車軸の軸距が1.3m以上かつ隣り合う車軸の軸重がいずれも 9.5t以下 20t:隣り合う車軸の軸距が1.8m以上 | ー |
輪荷重 | 5t | ー |
最小回転半径 | 車両の最外側のわだちについて12m | |
許可行政庁 | 道路管理者 | 出発地の警察署長等 |
【図1】一般的制限値
指定道路とは
道路管理者の指定により、上記の一般的制限値が緩和されている道路のことを言います。指定道路においては、一般的制限値を超える車両であっても一定の条件を満たせば通行許可は必要ありません。しかし、現実の場面では指定道路のみの通行で目的地に到達することは稀であり、通行許可が必要になることが多くなります。
指定道路には、重さ指定道路、長さ指定道路、大型車誘導区間の指定道路、重要物流道路などがあります。
重さ指定道路 | 総重量の一般的制限値を 車両の長さ及び軸距(じくきょ)に応じて最大25tとする道路(幅、長さ、高さの最高限度は一般的制限値と同じ) 【総重量】 20t(最遠軸距が5.5m未満) 22t(最遠軸距が5.5m以上7m未満で、貨物が積載されていない状態 で長さが9m以上の場合。9m未満は20t) 25t(最遠軸距が7m以上で、貨物が積載されていない状態で長さが 11m以上の場合。9m未満20t、9m〜11mは22t) |
高さ指定道路 | 高さの一般的制限値を 4.1mとする道路 |
大型車誘導区間 | 道路の老朽化への対策として、大型車両を望ましい経路へ誘導し、適正な道路利用を促進するために指定された道路。高速道路や直轄国道は、一部を除き原則全線指定されている。2016年からは、大型車誘導区間において包括的に許可がとれる特車ゴールド制度が始まった。(対象車種その他の要件あり) |
重要物流道路 | 2018年道路法改正により創設。国土交通大臣が物流上重要な道路輸送網として路線を指定し、機能強化や重点支援を実施する道路。道路構造の基準を国際海上コンテナ車対応に引き上げ 、構造上支障のない区間は、一定の要件を満たす国際海上コンテナ車 (40ft背高)に限って、通行許可不要とした。(対象車種その他の要件あり) |
特殊車両とは
車両の構造が特殊である車両、あるいは輸送する貨物が特殊な車両で、上記の一般的制限値を超えたり、橋、高架の道路、トンネル等で総重量、高さのいずれかの制限値を超える車両を特殊車両といい、道路を通行するには特殊車両通行許可が必要になります。
2.連結車の特例
セミトレーラ連結車・フルトレーラ連結車は、通行する道路種別ごとに総重量および長さの特例が設けられています。
総重量の最高限度の特例(特例5車種)
総重量の最高限度の特例を受けることができるのは、バン型、タンク型、幌枠型、コンテナ用、自動車運搬用、のセミトレーラ連結車・フルトレーラ連結車の特例5車種に限られます。なお、これらの制限値を超える場合は、特殊車両通行許可が必要になります。※特殊な車両の種類・ビジュアルについては、こちらを参照願います。☞国土交通省関東地方整備局「特殊な車両とは」」
道路種別 | 最遠軸距 | 総重量の制限値 |
高速自動車国道(※1) | 8m以上 9m未満 9m以上 10m未満 10m以上 11m未満 11m以上 12m未満 12m以上 13m未満 13m以上 14m未満 14m以上 15m未満 15m以上 15.5m未満 15.5m以上 | 25t 26t 27t 29t 30t 32t 33t 35t 36t |
重さ指定道路 | 8m以上 9m未満 9m以上 10m未満 10m以上 | 25t 26t 27t |
その他の道路 | 8m以上 9m未満 9m以上 10m未満 10m以上 | 24t 25.5t 27t |
※1.首都高速道路、阪神高速道路、その他の都市高速道路および本州四国連絡橋道路は含まれません。
長さの最高限度の特例(特例5車種、追加3車種)
特例5車種と追加3車種(あおり型セミトレーラ、スタンション型セミトレーラ、船底型セミトレーラ)に認められます。なお、これらの制限値を超える場合は、特殊車両通行許可が必要になります。
道路種別 | 連結車 | 長さ |
高速自動車道 | セミトレーラ連結車 フルトレーラ連結車 | 16.5m 18.0m |
(注)この特例は積載貨物が被けん引車の車体の前方または後方にはみ出していないものの長さです。
新規格車
新規格車とは、高速自動車国道および重さ指定道路を自由に通行できる次に示す車両を言います。ただし、その他の道路を通行する場合は、特殊車両通行許可申請が必要です。
車種 | 最遠軸距(d) | 長さ | 新規格車の制限値 |
特例 5 車種 | 8.0m ≦ d < 9.0m | ー | 24.0t <総重量≦ 25.0t |
9.0m ≦ d < 10.0m | ー | 25.5t <総重量≦ 26.0t | |
単車特例5車種を除く連結車 | d < 5.5m | ー | 総重量≦ 20.0t |
5.5m ≦ d < 7.0m | 9.0m ≦長さ | 総重量≦ 22.0t | |
長さ< 9.0m | 総重量≦ 20.0t | ||
7.0m ≦ d | 11.0m ≦長さ | 総重量≦ 25.0t | |
9.0m ≦長さ< 11.0m | 総重量≦ 22.0t | ||
長さ< 9.0m | 総重量≦ 20.0t |
(注)新規格車の車両の前面には「20t超」のワッペンが貼られます。
3.特殊車両通行許可申請について
申請先
通行する道路の道路管理者となります。
申請経路が複数の道路管理者にまたがるときは、そのうちの一つに申請すれば足ります(一括申請)。一括申請の場合、受理した窓口の道路管理者がその経路にあたる他の道路管理者と個別協議のうえ許可・不許可の判断をします。ただし、指定市の市道・開発道路以外の市町村道のみに関わる場合は、一括申請できません。
申請方法
窓口申請又はオンライン申請
申請に必要な書類
①特殊車両通行許可申請書
②添付書類
車両の諸元に関する説明書 | 各車両の諸元についての詳細を記載 |
通行経路表 | 出発地住所・目的地住所、路線名、交差点番号など |
通行経路図 | 出発地から目的地までの通行経路 |
自動車検査証の写し | オンライン申請の場合は不要 |
車両内訳書 | 包括申請(申請車両台数が 2 台以上の申請をいう。ただし、車種、通行経路、積載貨物及び通行期間が同じものに限る。)の場合に必要 |
道路管理者が必要とする書類 | 未収録道路(※2)を含む申請の場合は、通行経路、出発地、目的地がわかる地図の添付が必要。 なお、未収録道路を含まない場合でも出発地、目的地がわかる地図の提出を求められることがある。 |
軌跡図 | 車両が旋回する際の軌跡を示す図。場合により提出を求められることがある。 |
申請手数料
申請車両台数×経路数(往復の場合×2)×200円(国の場合)
一括申請の場合は協議手数料
申請の審査
申請を受け付けた道路管理者は、特殊車両通行許可基準に照らして、道路情報便覧(※3)を使用して、特殊な車両の通行の可否について審査します。なお
、申請から許可(不許可)までの標準処理期間の目安は3週間とされています。(申請経路が道路情報便覧に記載の路線で完結しており、申請車両の寸法や重量が許可の限度を超えない場合)
許可証の交付
通行が許可されたときには、道路管理者から通行条件(※4)とと もに許可証が交付されます。許可の期間は2年間です。(一定の要件を満たす優良事業者の場合は4年)
なお、交付された許可証は通行時に必ず当該車両に備え付ける必要があります。(オンライン申請で電子許可証を取得した場合は、①許可証、②条件書、③通行経路表、④通行経路図、⑤車両内訳書(包括申請時)を印刷して携行。)
※2.収録道路とは道路情報便覧に収録されている道路のことです。 未収録道路とはこれらの詳細情報データが無い路線のことを指し、このうち道路法に基づく道路(都道府県道、市町村道など)の管理者に対しては個別協議が必要となります。
※3.道路情報便覧とは、大型車誘導区間や高さ指定道路、重さ指定道路、道路番号や道路管理者名など、特殊車両通行許可の申請に必要な道路情報を国土交通省が無償で提供しているデータベースです。道路情報便覧では、そのほか、道路の上空障害箇所や狭小幅員箇所、曲線部障害箇所、橋梁箇所などの情報も確認できます。(道路通行許可の申請を受付けた道路管理者も、この道路情報便覧を利用して特殊車両の通行の可否を審査します。)
※4.道路管理者による審査の結果、又は通行可能経路の確認の結果、通行することがやむを得ないと認められるときには、 通行に必要な条件が付される場合があります。この条件を通行条件といい、通行条件には次のようなものがあります。
【通行条件】
重量に関する条件 | 寸法に関する条件 | |
A | 特別な条件を付さない。 | 特別な条件を付さない。 |
B | 徐行することを条件とする。 | 徐行することを条件とする。 |
C | 以下を条件とする。 ①徐行をすること。 ②他の車両との距離を確保することによって、通行する車線の一の径間を同時に通行する他の車両がない状態で通行すること。 ③②のため、許可車両の後方に1 台の誘導車を配置し通行すること。 | (屈曲部、幅員狭小部または上空障害個所の通行の場合) 以下を条件とする。 ①徐行をすること。 ②対向車等との衝突、接触その他事故の危険を生じさせない状態で通行すること。 ③②のため、許可車両の前方に1 台の誘導車を配置し、その連絡または合図を受けて通行すること。 (交差点の左折または右折の場合) 以下を条件とすること。 ①徐行をすること。 ②対向車等との衝突、接触その他事故の危険を生じさせない状態で通行すること。 ③②のため、 許可車両の前方に1 台の誘導車を配置し、その連絡または合図を受けて、誘導車に続いて左折または右折する こと |
D | 以下を条件とする。 ①徐行をすること。 ②他の車両との距離を確保することによって、通行する車線の一の径間を同時に通行する他の車両がない状態で通 行すること。 ③②のため、許可車両の後方に 1 台の誘導車を配置し通行すること。 ④隣接する車線の前方(隣接する車線が同一方向の車線である場合は後方)を十分に確認し、他の車両が隣接車線を通行しようとしているときは橋梁等への進入を控えることなどによって、可能な限り、隣接する車線における一の 径間を同時に通行する他の車両がない状態で通行すること(すれ違い、追越 し等によってやむを得ず他の車両が一 の径間を通行することとなるときは一 時停止すること。) |
4.その他の申請方法について
特車ゴールド
特車ゴールド制度とは、業務支援用 ETC2.0 車載器をセッ トアップ・装着した車両の登録と、特車ゴールド制度の利用登録を行うことにより、許可更新手続きが簡素化でき大型車 誘導区間における経路選択が可能となる制度です。特車ゴールド制度を利用すると、迂回経路として考えられる大型車誘導区間全てにおいても審査が行われるため、渋滞や事故、災害等による通行障害発生時に迂回ができ輸送の効率化ができます。ただし、通行経路の中に大型車誘導区間以外の許可が必要となる経路が含まれている場合は、その区間を管理する道路管理者の許可が必要になります。
重要物流道路における国際海上コンテナ車の運用
平成30年の道路法改正により、新たに創設された重要物流道路(道路管理者が道路構造等の観点から支障がないと認めて指定した区間)に限定して、一定の要件を満たす国際海上コンテナ車 (40ft 背高)の特殊車両通行許可(通行可能経路の確認の回答)なく通行することが可能となりました。
令和4年からの新制度(特殊車両通行確認制度)
ETC2.0 を搭載した車両を対象に道路情報便覧に収録され情報が電子化された道路について、システムが自動的に経路検索を行い、複数の通行可能経路を即時に示すことができ、通行可能経路の確認の回答(有効期間1年間)を得て、即時に通行することが可能になりました。ただし、この制度で確認対象となる道路は主要道路(大型車誘導区間と重要物流道路)だけになりますので、未収録道路や主要道路に含まれない市道や都道府県道などは対象になりません。