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登録基幹技能者になるメリット

投稿日 2025年4月23日 最終更新日 2025年4月23日
平成31年4月、専門工事企業の施工能力等の見える化、技能者が適正な評価や処遇を受けられる環境の整備などを目的に、建設技能者の能力評価制度がスタートし、技能者一人ひとりの技能や経験を蓄積し客観的に評価する仕組み(建設キャリアアップシステム)が構築されました。この能力評価制度の最高ランク(レベル4)に位置づけられたのが「技能者の目標像」としての登録基幹技能者です。
ただ、この制度に法的強制力はなく、登録基幹技能者に対する認知度もそう高くはありません。経営事項審査における加点、総合評価落札方式(公共工事)の評価制度、日建連会員企業による優良技能者認定の制度などが始まってはいるものの、業界全体で技能者の地位向上や処遇改善が実現するにはまだまだ時間がかかりそうです。
登録基幹技能者になることで得られるメリットは一見あまりないような感じがします。しかし、メリットの中には、案外見逃されているケースも少なくありません。そのあたりを中心に整理してみます。
1.登録基幹技能者とは
登録基幹技能者は、熟達した作業能力と豊富な知識を持つとともに、現場を効率的にまとめるマネジメント能力に優れた者として国土交通大臣認定の民間(各専門工事業団体)講習を修了した技能者のことを言い、講習修了者は主任技術者(又は一般建設業の専任技術者)としても認定されます。(※1)
建設技能者の能力評価制度の背景 建設現場において、技術者と技能者(技能労働者)は車の両輪です。建築物(構造物)は、技術者の知恵によって計画され、技能者の技によって具現化します。 技術者については、建設業法が定める技術者制度のもとで所定の技術者の配置が義務付けられており、必要とされる技術者の能力、キャリアに合わせた人材育成、処遇改善などの道筋が一定明確になっています。 一方、技能者については、直接的に作業を行い工事の品質に大きくかかわる役割でありながら、建設業法上の位置づけは必ずしも明確ではなく、その能力を適正に評価する制度上の基準や仕組みも充分とは言えませんでした。そのため、専門工事企業の施工能力やそのもとで働く技能労働者の能力が適正に評価されず、工事発注者に買い叩かれても外形上は認識しづらい構造となっていました。 |
※1.登録基幹技能者の他に、主任技術者として認定される民間資格として、①地すべり防止工事士(斜面防災対策技術協会)②基礎施工士(日本基礎建設協会及びコンクリートパイル建設技術協会)③1級計装士(日本計装工業会)④解体工事施工技士(全国解体工事業団体連合会)などがあります。ただし、①③には資格取得後1年の実務経験が必要です。
2.登録基幹技能者講習受講の要件
登録基幹技能者講習を受講するためには、次の要件を満たしている必要があります。
・当該基幹技能者の職種において、10年以上の実務経験(※2) |
・実務経験のうち3年以上の職長経験(※2) |
・実施機関において定めている資格等の保有(1級技能士、施工管理技士、建設マスターなど) |
なお、登録基幹技能者講習修了証の有効期間は5年です。更新するには、更新講習を受講する必要があります。
※2.例えば、登録電気工事基幹技能者には、電気工事業、電気通信工事業の2業種がありますが、各々10年以上の実務経験年数と職長経験3年以上を必要とします。2業種の実務経験を合算して10年以上とすることはできません。
3.登録基幹技能者になるメリット
- 経営事項審査での加点評価
経営規模等評価の技術力(Z)の中の技術職員数(Z1)において、登録基幹技能者には3点を加点
- 総合評価落札方式での評価
公共工事等で実施される総合評価落札方式において、技術能力などの評価項目で加点
- 建設企業の「優良技能者認定」
参考☞「日建連会員企業における優良技能者認定制度(手当等あり)について(2022.9.30現在)」
- CCUS能力評価基準の最高位(レベル4=ゴールドカード)要件の資格
- 主任技術者(又は専任技術者)要件への認定
登録基幹技能者講習を修了した者のうち、許可を受けようとする建設業の種類に応じ、国土交通大臣が認める者(※3)については、主任技術者の要件を満たす者と認められます。(H30.4.1~ 建設業法施行規則第7条の3の改正)
※3.令和6年10月18日において、47職種となっています。
4.主任技術者への近道として活用できそうな登録基幹技能者の職種
上記3.で、登録基幹技能者になるメリットとして、「主任技術者要件への認定」をあげましたが、登録基幹技能者が主任技術者になるための近道ということでは決してありません。
建設業法は、工事種類ごとに10年以上の実務経験を有している者(学歴に応じた短縮規定あり)を主任技術者(及び専任技術者)の要件を満たす者として認めています。ところが、登録基幹技能者講習の受講要件をクリアするには、10年以上の実務経験に加え、職長としての3年の実務経験が必要になります。さらに、技能講習の実施機関が定める資格の中には、施工管理技士や技能士など単独で主任技術者になりうる資格を含んでいるもの(下表の上段部分、背景色青色)が多くあります。
一方で、登録基幹技能者の職種の中には、単独で主任技術者になりうる資格を含んでいないもの(下表の下段部分、背景色が黄色部分)も多くあります。これらに、単独で主任技術者になり得る資格ではないものの、それ自体の取得が難しい建設マスターや職業訓練指導員などの資格を除いたものが、赤文字で表記した職種となります。
赤文字で表記した資格の中には特殊な実務経験(例えば、「橋梁」の場合は鋼橋架設工事の実務経験)を要するものも多く、決して難易度が低いということではありませんが、これを上手に活用(あるいは、既に受講済みの講習などが含まれているかもしれません)することで、登録基幹技能者の資格取得が建設業許可取得の近道になりえます。
なお、上記の表の【 】内は受講資格を満たす実務経験の業種を表しており、同時に講習修了後の主任技術者の要件を満たすものとなりますが、「土」と「建」については、主任技術者の要件を満たすものとして認められていません。
☞参照 「登録基幹技能者講習 受講資格(一般社団法人建設業振興基金)HP」
【活用できそうな登録基幹技能者資格の職種の例】
職種(主任技術者として認められる業種) | 実施機関において定めている資格等のうち主任技術書となりうる資格、建設マスター、職業訓練指導員を除いた資格 |
機械土工(と) | 技能講習修了者(いずれか1つで受講可能) ① コンクリート破砕器作業主任者技能講習) ② 地山の掘削又は土止め支保工作業主任者技能講習 ③ ずいどう等の掘削作業主任者技能講習 ④ ずいどう等の覆工作業主任者技能講習 ⑤ 採石のための掘削作業主任者技能講習 ⑥ 型枠支保工の組立作業主任者技能講習 ⑦ 足場組立等作業主任者技能講習 ⑧ ガス溶接技能講習 ⑨ 玉掛け技能講習 ⑩ 小型移動式クレーン運転技能講習 ⑪ フォークリフト運転技能講習 ⑫ ショベルローダー等運転技能講習 ⑬ 車両系建設機械(整地・運搬・積込用及び掘削用)運転技能講習 ⑭ 車両系建設機械(基礎工事用)運転技能講習 ⑮ 車両系建設機械(解体用)運転技能講習 ⑯ 不整地運搬車運転技能講習 ⑰ 高所作業車運転技能講習 |
土工(と) | A群もしくはB群の資格を有すること。 A.1つの保有で受講可能 ①~④省略 ⑤ 発破技士 もしくは 火薬類取扱保安責任者 ⑥ 地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習 B.2つ以上の保有で受講可能 ① 地山の掘削作業主任者技能講習 ② 土止め支保工作業主任者技能講習 ③ 型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習 ④ 足場の組立て等作業主任者技能講習 ⑤ コンクリート破砕器作業主任者技能講習 ⑥ はい作業主任者技能講習 ⑦ 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習 ⑧ 不整地運搬車運転技能講習 ⑨ 高所作業者運転技能講習 ⑩ フォークリフト運転技能講習 ⑪ 小型移動式クレーン運転技能講習 ⑫ 玉掛け技能講習 ⑬ ガス溶接技能講習 |
消火設備(消) | 消防設備点検資格者(第1種) |
建築測量(大) | 測量士 |
また、その他よく活用されているものとして、第一種電気工事士の資格取得者で電気通信工事業の所定の実務経験を満たしている場合、登録電気工事基幹技能者の講習修了者となることで電気通信工事業の主任技術者の要件を満たす、というものがあります。
5.その他
- 登録基幹技能者講習修了証の様式について
登録基幹技能者講習修了証(新様式)により、当該技能者が主任技術者要件を満たしていることを証明することができます。旧様式での証明も可能ですが、一部の講習(※4)については、複数業務の実務経験を合算して10年以上とし、講習の受講要件として認めたものがあるので注意が必要です。
【登録基幹技能者講習修了証】
⇒新様式には、主任技術者の要件を満たす者であると認められる旨明記することとなっている。 |
※4.登録橋梁基幹技能者講習(鋼、と)、登録トンネル基幹技能者講習(土、と)、登録海上起重基幹技能者講習(土、し)、登録標識・路面標示基幹技能者講習(と、塗)、登録外壁仕上基幹技能者講習(左、塗、防)
- 失効した登録基幹技能者講習証の扱い
登録基幹技能者講習修了証の有効期限が切れている場合でも資格や実務経験は認められます。住所や所属建設業者名が古い内容であっても、資格や実務経験は認められます。