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宅地建物取引業免許の取得について
投稿日 2021年9月15日 最終更新日 2024年2月17日
建設業と宅地建物取引業を兼業するケースがよく見られます。建設業と宅地建物取引業は相性が良く、二つの業種を兼ねることで相乗効果が期待できるからです。例えば、自社で建てた物件を自ら販売(建売)したり、自社が建設工事を請け負ったアパートやマンションの売買や賃貸をオーナーから任されるような場合です。さらに、不動産取引のおつきあいが縁で、建設工事の仕事が舞い込んでくる場合もあります。
しかし、宅地建物取引業は誰でもできるわけではありません。宅地や建物の売買、売買や賃貸の代理や仲介(媒介)などをする場合には、宅地建物取引業の免許を取得しなければなりません。
1.免許の区分と申請先
免許の区分 | 区分基準:設置場所 | 申請先 |
都道府県知事 | 1つの都道府県の区域内に事務所を設置する場合 | 都道府県知事に直接申請 |
国土交通大臣 | 2つ以上の都道府県の区域内に事務所を設置する場合 | 都道府県知事を経由して国土交通大臣に申請 |
以下の欠格事由に該当する場合は、(上4つは5年間)免許を受けることができません。
- 免許不正取得、情状が特に重い不正不当行為、業務停止処分違反をして免許の取消を受けた場合
- 免許取消処分の聴聞の公示をされた後、廃業等の届出を行った場合
- 禁固以上の刑又は宅地建物取引業法違反等により罰金の刑に処せられた場合
- 免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした場合
- 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者、心身の故障により宅地建物取引業を適正に営むことができないものとして国土交通省令で定める者である場合
- 宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな場合
- 事務所に専任の宅地建物取引士を設置していない場合
2.免許取得の要件
- 人的要件(専任の取引士)
一つの事務所において業務に従事する者5名に1名以上の割合で専任の宅地建物取引士を設置すること。(新免許申請の場合の専任の宅地建物取引士は、登録上は「勤務先なし」の状態でなければ申請できないことに注意!)この場合の専任の宅地建物取引士は、常勤性と専従性の2つの要件を満たす必要があります。
なお、宅地建物取引士として業務に従事するには、宅地建物取引士試験に合格し、2年間実務を経験(又は登録実務講習を修了)したうえで都道府県知事に登録の申請をする必要があります。(業者自体が申請する「宅建業免許」の他に「宅地建物取引士の登録」が必要です。)登録を受けた宅地建物取引士には「宅地建物取引主任者証(有効期限5年)」が交付され、「宅地建物取引士資格登録簿」に記載されることになります。 - 物的要件(事務所)
事務所は、物理的にも宅建業の業務を継続的に行える機能を持ち、社会通念上も事務所と して認識される程度の独立した形態を備えていることが必要です。また、宅地建物取引業を行なおうとする者が、事務所として使用する権原を有し ていることも必要です。 - 財産的要件(営業保証金の供託又は保証協会への加入)
宅地建物の取引をめぐる事故で生じた債務について、弁済を一定範囲で担保するための措置として、あらかじめ最寄りの供託所に法定の営業保証金を供託しなければなりません。供託額は、主たる事務所(本店)で1000万円、従たる事務所(支店等)で1店につき500万円です。
国土交通大臣から指定を受けた保証協会(宅地建物取引業保証協会)に加入すれば、この営業保証金を供託する必要はありません。加入の際に保証協会に支払う弁済業務保証金分担金の額は、主たる事務所(本店)で60万円、従たる事務所(支店等)で1店につき30万円です。
3.免許取得手続きの流れ(知事許可~大阪府の場合)
①書類作成(申請者) | |
②免許申請(申請者) | 申請内容は申請時点において確定していることが必要 |
③審査(大阪府) | 欠格要件等の審査等。標準審査期間は5週間。 |
④免許(大阪府) | ハガキで事務所に届く。 |
⑤供託手続等(申請者) | A営業保証金の供託 B保証協会への加入(弁済業務保証金分担金の納付)*手続きに2か月ほど要します。 |
⑥供託済みの届出書(申請者) 免許証交付(大阪府) | 申請者は、免許証交付にあたり、①Aは供託書、Bは納付書又は証明書、②大阪府から送られてきたハガキ、③取引士資格変更登録申請書を持参する。 |
⑦営業開始 | 免許の有効期間は5年間 |
4.申請に必要な書類
書類の名称 | 法人 | 個人 | ||
1 | ☆ | 免許申請書(第一面 ~ 第四面) | 〇 | 〇 |
2 | ☆ | 相談役及び顧問 【添付書類4・第一面】 100分の5以上の株主又は出資者 【添付書類4・第二面】 | 〇 | × |
3 | ☆ | 略歴書 【添付書類6】 専任の宅地建物取引士の専任性確認書類(31条の3誓約書、取引士証写し、その他従事状況により必要となる書類) | 〇 | 〇 |
4 | ★ | 法人の登記簿謄本 (履歴事項全部証明書) 【法務局発行】 | 〇 | × |
5 | ☆ | 宅地建物取引業経歴書 【添付書類1】 | 〇 | 〇 |
6 | 貸借対照表及び損益計算書 | 〇 | × | |
7 | ☆ | 資産に関する調書 【添付書類7】 | × | 〇 |
8 | ★ | 法人税(法人の場合)の納税証明書(様式その1) 所得税(個人の場合)の納税証明書(様式その1)【税務署発行】 | 〇 | 〇 |
9 | ☆ | 5条誓約書 【添付書類2】 | 〇 | 〇 |
10 | ☆ | 専任の宅地建物取引士設置証明書 【添付書類3】 | 〇 | 〇 |
11 | ☆ | 宅地建物取引業に従事する者の名簿 【添付書類8】 | 〇 | 〇 |
12 | 事務所付近の地図 | 〇 | 〇 | |
13 | 事務所の写真 | 〇 | 〇 | |
14 | ☆ | 事務所を使用する権原に関する書面 【添付書類5】 上記書面を確認できる契約書・登記簿謄本等の原本(提示のみ) | 〇 | 〇 |
15 | ★ | 申請者の住民票抄本 | × | 〇 |
16 | ★ | 身分証明書【本籍地の市区町村発行】 ※外国籍の方は住民票抄本(国籍が記載されているもの) | 〇 | 〇 |
17 | ★ | 登記されていないことの証明書【法務局発行】 又は 契約の締結及びその履行にあたり必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができ る能力を有する旨を記載した医師の診断書 | 〇 | 〇 |
該当者のみ | 1.1年以上事業の実績がない場合の申立書 ⇒「5.宅地建物取引業経歴書」で、事業年度ごとに実績がない場合に添付 2.同一建物内の代表権行使に支障がない旨の誓約書 【法人のみ】 ⇒法人代表者が、同一建物内にある2法人以上の代表者を兼ねている場合に添付 ※ただし、法人代表者が専任宅地建物取引士を兼ねている場合は、不可 3.建物の間取図または平面図 ⇒住宅の一室を事務所として使用する場合、または一室を他法人と共同で事務所 として使用する場合に添付 4.決算期が到来していない旨の理由及び開始貸借対照表 【法人のみ】 ⇒法人において、申請時に第1期の決算期が到来していない場合に添付 | △ △ △ △ | △ × △ × |
☆印表記のものは、法施行規則による指定様式。
★印のものは、官公署発行の証明書等。申請日前3月以内に発行されたものであること。
5.宅地建物取引業と建設業の兼務の可否
建設業許可業者が宅建業を兼務している場合、建設業の「経営業務の管理責任者」「専任技術者」のように、事務所や営業所等において、常勤性や専従性を要件として設置されている者は、宅建業で常勤性や専従性が求められている「常勤の代表者」「政令の使用人」「専任の宅地建物取引士」を兼務することができません。
*大阪府の場合は、同一法人(または同一個人業者)・同一場所(同一建物)で勤務する場合に限り、兼務が認められることがあります。