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コラム

2022.01.31

建設業

コンプライアンス

建設業の外国人雇用と在留資格 

投稿日 2022年1月31日 最終更新日 2022年9月23日

 我が国に入国する外国人には、入管法(出入国在留管理及び難民認定法)上の在留資格が与えられますが、在留資格の中には就労が認めらないものがあり、さらに就労が認められる在留資格であっても活動の範囲が制限されている場合がほとんどです。
 そのため、不法入国者や不法残留者を雇用した場合はもちろん、就労資格のない外国人を雇用したり、認められた活動の範囲を超えて就労させた場合は、不法就労助長罪で摘発を受けることになります。不法就労であることを知らなかったとしても、知らないことについて過失があったと認定されると、免責されることはありません。
 ここでは、建設業者が雇用することができる外国人の在留資格の種類と各在留資格で留意すべき事項について解説します。

目次

1.技能実習

 「技能実習」は、国際貢献のための制度です。すなわち、我が国の企業等との雇用契約に基づき、開発途上国等の外国人を一定期間(最長5年間)に限り受入れ、ОJTを通じて技能を移転する制度です。そのため、技能等が適正に修得・習熟・熟達でき、実習に専念できるよう保護を図る体制が確立された環境で行なわれなければならず、人手不足解消の手段として行なわれてはならないとされています(技能実習法3条1項、2項)。

  • 受入れの方式
    【企業単独型】技能実習1号イ、2号イ、3号イ
    我が国の企業等が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受入れて技能実習を実施
    【団体管理型】技能実習1号ロ、2号ロ、3号ロ
    外国人技能実習機構を通じて主務大臣(法務大臣・厚生労働大臣)の許可を受けた監理団体(非営利の団体、事業協同組合、商工会など)が技能実習生を受入れ、傘下の企業等(実習実施者=いわゆる受入企業)で技能実習を実施
  • 技能実習生を受入れるには
    技能実習生を受入れるためには、実習実施者(及び監理団体)が、技能実習生ごとに技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構の認定を受ける必要があります。
    技能実習計画が認定されると、監理団体は技能実習生の代理人として在留資格認定(変更)証明書の交付申請を行ないます。技能実習生に在留カードが交付されると受入れが可能になります。
    なお、実習実施者には、技能実習計画の認定申請の他に、実習実施者の届出、関係帳簿の保管義務、技能実習責任者等の選任、実習生の受入れ人数の制限、申請者および技能実習生の建設キャリアアップシステムへの登録義務などにも対応する必要があります。
  • 技能実習の流れ
    技能実習計画には、技能検定の合格を目標とする旨を記載する必要があります。従って、実習実施者は、技能実習を通じて技能検定に合格する水準まで技能実習生の技能を向上させる必要があります。
在留資格活動等
1年目技能実習1号イ、ロ●入国
●技能等を修得する活動
・講習 実習実施者(受入企業)(企業単独型のみ)又は監理団体で原則2カ月間実施(雇用関係なし)
・実習 実習実施者で実施(雇用関係あり)
※団体管理型の場合は、監理団体による訪問指導・監査
●技能実習1号終了までに「基礎級」技能検定(実技と学科試験)を受験(再受験1回のみ)
2年目
3年目
技能実習2号イ、ロ●在留資格の変更又は取得(基礎級合格者のみ)
●技能等を習熟するための活動
※3年目に入る前に在留期間の更新手続き必要◎技能実習2号終了までに「随時3級」技能検定(実技試験)を受験(再受験1回のみ)
4年目5年目
技能実習3号イ、ロ●一旦帰国◎在留資格の変更または取得(随時3級合格者のみ)
●技能等に熟達する活動◎技能実習3号修了までに「随時2級」技能検定(実技試験)を受験(再試験1回のみ)
●帰国
  • 技能実習生が従事できる建設関係の作業25職種38作業)2022年1月29日現在
職種名作業名
さく井パーカッション式さく井工事、ロータリー式さく井工事
建築板金*1ダクト板金、内外装板金
冷凍空気調和機器施工冷凍空気調和機器施工
建具製作木製建具手加工
建築大工*2大工工事
型枠施工*3型枠工事
鉄筋施工*4鉄筋組立
とび*5とび
石材施工石材加工、石張り
タイル張りタイル張り
かわらぶき*6かわらぶき
左官*7左官
配管*8建築配管、プラント配管
熱絶縁施工*9保温保冷工事
内装仕上施工*10プラスチック系床仕上げ工事、カーペット系床仕上げ工事、鋼製下地工事、ボード仕上工事、カーテン工事
表装*11壁装
サッシ施工ビル用サッシ施工
防水施工シーリング防水工事
コンクリート圧送施工*12コンクリート圧送工事
ウエルポイント施工ウエルポイント工事
建設機械施工●
*13
押土・整地、積込み、掘削、締固め
築炉△築炉
鉄工構造物鉄工
塗装建築塗装、鋼橋塗装
溶接手溶接、半自動溶接

●の職種;技能実習評価試験に係る職種 ●以外は技能検定の職種
△のない職種;作業は3号まで実習可能
*1~*13(13職種22作業)は、「特定技能」の受入れ対象

2.特定技能

 「特定技能」は、深刻化する人材不足に対応するため、特定の産業分野(建設を含む14分野)において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受入れる制度です。特定技能には、相当程度の知識又は経験を必要とする特定技能1号と、熟練した技能を要する特定技能2号があります。

  • 特定技能1号、2号について
     特定技能1号は、各分野毎に課せられる技能試験及び日本語試験に合格するか、技能実習2号または3号を良好に修了することで、該当分野に限り5年間を上限に就労することができる資格です。 在留資格の認可に学歴や母国における関連業務への従事経験は不要とされています。
     特定技能2号は、特定技能1号の資格保有者が分野別に実施される試験で技術水準の高さが評価された場合に付与される在留資格です。在留期限に上限はなく、就労先がある限り3年、1年又は6か月ごとに在留期限を更新し続けることも可能です。また、一定の要件を満たせば、家族帯同(配偶者、子)をすることもできます。ただし、受入れ機関又は登録支援機関による支援を受けることはできません。
  • 特定技能の受入れ対象分野「建設分野」19業種区分について
    技能実習から特定技能に移行可能な業務区分(13業種22作業)
建築板金*1左官*7
建築大工*2配管*8
型枠施工*3保温保冷*9
鉄筋施工*4内装仕上げ*10/表装*11
とび*5コンクリート圧送*12
屋根ふき*6建設機械施工*13

*1~*13は、技能実習生の項の表に対応しています。

  • 【特定技能において新たに設ける業務区分(技能実習がない業務区分)】
トンネル推進工鉄筋継手
土工吹付ウレタン断熱
電気通信海洋土木工

※国土交通省「建設分野における外国人の受入れ」を参考に作成

  • 受入れ機関と登録支援機関
    【受入れ機関】
    外国人と直接雇用契約を締結する企業
     受入れ機関は、外国人と結んだ雇用契約を確実に履行するとともに外国人への支援を適切に実施しなければなりません(支援機関への委託も可)。出入国在留管理庁への各種届出も必要です。
    【登録支援機関】受入れ機関からの委託を受け支援計画の実施を行う機関
     登録支援機関は、外国人への支援を適切に実施し、出入国在留管理庁への各種届出も行います。
  • 特定技能の外国人を受入れるには
     外国人との雇用契約締結後、出入国在留管理庁へ在留資格認定(変更)証明書の交付申請を行います。外国人に在留カードが交付されると受入れが可能になります。
     なお、受入れ機関として認められるためには、①外国人の受入れに関する建設業者団体一般社団法人建設技能人材機構JAC)又は、JACの正会員である建設業者団体に加入すること ②建設業法の許可を受けていること ③日本人と同等以上の報酬・昇給条件の契約を締結していること ④報酬等を記載した「建設特定技能受入計画」について、国交省の認定を受け適正に履行すること ⑤特定技能外国人を建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録すること等の条件をクリアする必要があります。

3.技能~建築技術者(2号)

 「技能」の在留資格は、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する外国人を受入れるための制度です。
 建設分野においては、外国に特有な建築又は土木(ゴシック、ロマネスク、バロック方式又は中国式、韓国式等の建築、土木に関する技能など)に係る技能について10年以上の実務経験を有する者で、当該技能を要する業務に従事する者に認められる在留資格(技能~建築技術者(2号))です。従って、技能の在留資格をもつ外国人を認められた業務以外の業務(「外国に特有」と認められない業務、単純労働など)に従事させることはできません。

4.技術・人文知識・国際業務

 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、「技術・人文知識(大卒ホワイトカラー、技術者)」と「国際業務(外国人特有又は特殊な能力等を生かした職業)」に大別されます。
 「技術」は自然科学の分野の専門技術者を外国から受入れるための制度であり、「人文知識」は文化系の学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的知識を有した人材を外国から受入れるための制度で、いずれも、学歴要件(大学卒業又は本邦の専修学校修了)があります。
 「国際業務」は、外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を必要とする文科系の活動をいいます。翻訳・通訳などが代表例です。学歴要件はありませんが、従事しようとする業務に関し3年以上の実務経験が必要です(大卒者の場合は実務経験不要)。

 建設業において、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で従事可能な業務としては、施工管理、設計、建設技術の研究職、建築積算業務、建設に係る営業職などが考えられます。ただし、職務の内容については、建設業の専門性を問われない職種(営業や通訳など)を除き、大学等の専攻や実務経験と関連している必要があります。関連性のない業務や単純労働に従事させることはできません。
 「技術・人文知識・国際業務」の外国人を受入れるには、雇用契約を締結後、出入国在留管理庁へ在留資格認定(変更)証明書の交付申請を行います。外国人が在留カードの交付を受けたあとに受入れることができます。

5.留学、家族滞在、一部の特定活動

 「留学」「家族滞在」は、就労が認められていない在留資格ですが、収入を伴う活動を行なおうとする場合には、あらかじめ出入国在留管理庁から資格外活動許可を受ける必要があります。
 資格外活動許可を受けた場合には、週28時間以内(どの曜日から1週の起算をした場合でも常に1週について28時間以内であること)であれば、アルバイトとして単純労働に就労させることが可能です。
 また、一部の特定活動(継続的就職活動もしくは内定後就職までの活動、ワーキングホリデー、難民認定申請中の者など)で資格外活動が認められる場合もあります。この場合は、資格外活動許可証などで資格外活動許可の有無を確認のうえ就労させる必要があります。なお、特定活動32号(外国人建設就労者)については、2021年4月1日以降は新たな就労は認められていないので注意してください。

6.永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者

 「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」などの身分・地位に基づく在留資格については、就労制限が設けられていないので、日本人と同様に建設業のどのような業種にも制限なく就労させることが可能です。

7.外国人を雇用する際の注意点

  • 在留資格の確認
    在留カードは真正なものか?
    顔写真は本人に間違いないか確認するとともに、出入国在留管理局のホームページから「在留カード読取りアプリケーション」をダウンロードしてカードが偽造されたものでないことを確認します。
    在留期間(満了日)を経過していないか?
    在留カードで確認します。
    活動制限に抵触していないか?
    身分・地位に基づく在留資格の場合は、資格外活動許可を得ているか在留カード、資格外活動許可証又はパスポートに貼付されたシール、スタンプなどで確認します。
    就労系の在留資格の場合は、認められた活動の範囲が在留カードだけでは把握できないので、指定書(特定活動の場合)就労資格証明書(転職してきた技術・人文知識・国際業務の場合)などで確認します。
  • 外国人雇用状況の届出
    事業主は、新たに外国人を受入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、所定の期間内に厚生労働大臣(ハローワーク)に届出をする必要があります。(外交、公用、特別永住者を除く)
  • 外国人建設就労者建設現場入場届出書の提出
    在留資格が「特定技能」又は「特定活動(32号外国人建設就労者)」の場合は元請業者に対し「外国人建設就労者建設現場入場届出書」を提出しなければなりません。
  • 労働条件・雇用管理等
    日本国内で就労する限り国籍を問わず、労働関係法規の適用があります。従って、外国人も日本人と同様に、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、雇用保険法等が適用されます。
  • 社会保険・税金等
    健康保険等の社会保険の適用については、外国人労働者も日本人と同様に適用になります。(加入は義務です。任意加入ではありません。)

  

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