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コラム

2023.11.19

建設業

コンプライアンス

建築物の解体等工事にかかわる石綿(アスベスト)規制について

 石綿(アスベスト※1)は、耐火、耐熱、防音等の性能に優れた天然の鉱物であり、安価で加工しやすいことから「奇跡の鉱物」として重宝され、1970年から1990年にかけて建築物や工作物に大量に使用されてきました(※2)。しかしその後、石綿を吸引することにより肺がんや中皮腫等の健康被害(※3)が引き起こされることがわかり、2012年以降は製造・使用等が全面的に禁止されています。今後は、その当時に建てられた建築物や工作物の老朽化に伴い解体・改修工事が増加することが予想されます。2023年10月には、改正大気汚染防止法と改正石綿障害予防規則が完全施行され、石綿にかかわる規制が大幅に強化されました。

※1. 石綿(アスベスト)は天然の鉱物繊維で「せきめん」「いしわた」と呼ばれており、発がん性の強いものから青石綿(クロシドライト) 茶石綿(アモサイト)白石綿(クリソタイル)などがあります。
※2. 2006年9月までに1000万トンの石綿が消費されました。☞独)環境再生保全機構HP
※3. 中皮腫による死亡者数は2022年には累計で3万人を超えています。石綿関連疾患の一部はばく露から発症までに30年から40年かかることから、今後も死亡者数の増加が見込まれます。☞独)環境再生保全機構HP

1.石綿含有建材(=特定建築材料)

 石綿(アスベスト)の含有量が0.1%(重量比)を超える建材は、石綿含有建材(大気汚染防止法上は特定建築材料)と呼ばれ、その全てが法令(※4)の規制対象となっています。また、石綿含有建材は石綿繊維の飛散性(発塵性)の違い等により次表のとおり区分されています。その区分により法令上遵守すべき規定が変わってくるため、建材の区分の把握は重要です。

※4. 大気汚染防止法、石綿障害予防規則、都道府県や政令市の条例など

区分飛散性【区分】石綿含有建材の例
レベル1【吹付け石綿】 
 鉄骨(S)造では、柱や梁の鉄骨を熱から保護するため、石綿含有吹付け材が使用されている(使用禁止後、耐火被覆材に移行)。鉄筋コンクリート(RC)造でも、天井・壁等の耐火・耐熱、吸音、結露防止、居室等の意匠として使用
●柱や梁に施工(吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウー ル)
●主に天井に施工(石綿含有吹付けバーミキュライト)など
レベル
2
【石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材】 
 煙突やダクト等の断熱、配管の保温、天井や壁の断熱、結露防止、貫通部の耐火(吹付石綿の代替)として使用
●屋根など水がかかる部分の下地に貼るフェルト(屋根用折板石綿断熱材)
●配管のエルボ部に使用(配管等保温剤 )
●柱や梁に板状に施工(鉄骨耐火被覆材)
●煙突の躯体に使用(煙突用石綿断熱材)
● ダクトやエルボの保温に使用(ボイラー保温剤)
レベル3【石綿含有仕上塗材(ぬりざい)
 内外装の仕上げに耐候・意匠の目的で使用
●吹付施工、ローラー施工(リシン・じゅらく・スタッコ模様)

【石綿含有成形板等】
①建物の内材(壁、天井、床、間仕切り)に耐火・吸音・結露防止・防水・意匠の目的で使用
●天井(石綿含有化粧石膏ボード、石綿含有ロックウール吸音板)
●床(石綿含有ビニル床タイル)
②建物の外装材(外壁、軒天、屋根、煙突材)に耐火・耐候・防水・意匠の目的で使用
●屋根材・外壁など(石綿含有スレート波板)
●軒天(石綿含有けい酸カルシウム板第1種)
●外壁(石綿含有窯業系サイディング)

2.工事前の調査・報告・掲示・届出など

石綿の有無の調査(事前調査)

 解体・改修工事を行う元請業者は、石綿の使用の有無や工事の規模の大小にかかわらず全ての工事について、工事を行う前に石綿含有建材(特定建築材料)の使用の有無について事前調査をする必要があります。事前調査の方法については、大気汚染防止法に規定されており、①設計図書その他書面による調査 ②現地での目視による調査の両方を行ったうえで、石綿含有の有無が不明であった場合には、③分析による調査が必要になります。

 なお、この事前調査を行なうことができるのは大気汚染防止法が定める有資格者※5)に限られています(外部委託も可能)。(2023年10月1日~)

 
 ※5. 大気汚染防止法が定める有資格者とは、①一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者) ②特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者) ③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者) ④令和5年9月30日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている者。なお、③は一戸建て住宅や共同住宅の住戸の内部のみ調査可能。

事前調査の結果の報告(対発注者、対都道府県知事等)

 解体・改修工事を行う元請業者は、発注者に対し作業開始前に事前調査の結果を書面を交付して説明する必要があります。また、元請業者は事前調査の記録を作成し、その写しを現場に据え置くとともに、記録及び発注者への説明書面の写しを解体作業終了日から3年間保存(電子保存可)しなければなりません。

 さらに、元請業者は一定規模以上の工事について、石綿含有建材の使用の有無にかかわらず事前調査結果を都道府県等に遅滞なく報告しなければなりません(2022年4月1日〜)。

⚫︎報告の対象となる工事

建築物の解体作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上
建築物の改造、補修請負代金の合計が100万円以上
工作物の解体、改造、補修環境大臣が定める工作物であって、請負代金の合計が100万円以上

石綿含有建材の種類ごとの有無、延べ床面積などを報告します。報告は、GビズIDでログインし石綿事前調査結果報告システム(石綿障害予防規則と共通のシステム)により都道府県等と労働基準監督署の両方に行います。

事前調査結果の掲示

 事前調査結果については、全ての解体等工事において公衆の見やすい場所に掲示が必要です(A3サイズ以上の掲示板を設置します)。

作業計画の作成と届出

 事前調査の結果、解体・改修工事を行う建築物その他の工作物に石綿含有建材(特定建築材料=レベル1〜3の全ての石綿含有建材)が含まれている場合、その工事は大気汚染防止法上の特定工事特定粉じん排出等作業を伴う工事)となります。特定工事を行う場合は、作業計画を作成し、計画に基づいて特定粉じん排出等作業を行う必要があります。

 特定工事のうち石綿を大量に発生し、又は飛散させる原因となるレベル1、2の石綿含有建材を除去・封じ込め・囲い込みを行う場合は、届出対象特定工事に該当し、作業開始の14日前までに都道府県等へ上記の作業計画特定粉じん排出等作業の実施計画)の届出が必要になります。この場合の届出は、元請業者ではなく発注者が行います。なお、この届出については、各都道府県等の上乗せ条例にも注意が必要です(※6)。

※6. 大阪府の場合。「大阪府生活環境の保全等に関する条例」で、石綿含有仕上塗材、石綿含有成形板等(いずれもレベル3)であっても、使用面積1000㎡以上の場合は届出が必要です。また、吹付け石綿、石綿含有断熱材、石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材の使用面積が50㎡以上の解体等作業の場合(石綿含有断熱材、石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材をかき落とし等以外の方法で除去する場合は除く)、石綿濃度測定計画の届出が必要です。

【参考】特定粉じん排出等作業のフロー図

3.工事に対する規制

作業体制

 特定粉じん排出等作業を行う事業者は、石綿作業主任者(石綿作業主任者技能講習の修了者)を1名選任しなければなりません。また、作業従事者は全員、石綿特別教育(石綿取扱い作業従事者特別教育)を受講する必要があります。

作業基準の遵守

 特定粉じん排出等作業を行なう際には、作業の種類ごとに定められた作業基準※7)を遵守しなければなりません。

例)作業内容に関する掲示、プラスチックシートによる作業場の隔離・養生、HEPAフィルタを付けた集じん・排気装置による作業場及び前室内の負圧化、薬液等による湿潤化など適正な搬出先への確実な搬出、呼吸用保護具の着用など

 なお、特定工事のうちレベル1,2建材に係る工事(届出対象特定工事)について、行うべき措置や方法(※8)に違反があった場合には、作業基準適合命令を介さずに直接罰が適用されます。(3月以下の懲役又は30万円以下の罰金)

※7. 作業基準については、環境省HP「大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について」を参照願います。

※8. 直接罰が適用になるのは、以下の①~④のいずれかの方法により行わなかった場合 ①かき落とし、切断、又は破砕することなく、そのまま取り外す方法 ②隔離+集じん・排気装置を使用する方法 ③隔離+集じん・排気装置を使用する方法に準じる方法(例.グローブバッグ) ④封じ込め又は囲い込み

4.石綿の除去作業完了後の確認と発注者への報告

作業の記録

 特定工事(特定粉じん排出等作業を伴う工事)の元請業者等又は下請負人は、特定工事における施工の分担関係に応じて、特定粉じん排出等作業の実施状況の記録を特定工事が終了するまでの間保存する必要があります。

作業が計画に基づき適切に行われていることの確認

 特定工事の元請業者等は、下請負人が作成した記録により作業が計画に基づき適切に行われているか確認し、記録を作成・ 保存する必要があります。

取り残し等の確認

 元請業者等は、除去作業については取り残しがないこと、囲い込み及び封じ込めについては措置が正しく実施されているか否かについて、必要な知識を有する者※9)に目視で確認させる必要が あります。

※9. 石綿作業主任者又は※5の有資格者

5.石綿を含む産業廃棄物の適正な処理・管理

 特定工事から排出された石綿を含む産業廃棄物は、廃棄物処理法により、廃石綿等石綿含有廃棄物の2種類に区別され、それぞれの区分について、分別、保管、収集、運搬、処分等を適正に行うための処理基準等が定められています。詳しくは、プログ「石綿を含む産業廃棄物の適正な処理・管理」を参照願います。

  • 廃石綿等・・レベル1,2建材、特別管理産業廃棄物に該当する。
  • 石綿含有廃棄物・・・レベル3建材

 

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