建設業
コンプライアンス
石綿を含む産業廃棄物の適正な処理・管理
解体・改修工事から排出された建設廃棄物のうち石綿含有量が0.1%(重量比)を超えるものは、廃棄物処理法の石綿含有廃棄物等として、定められた基準(※1)に基づき適正に処理(分別、保管、収集・運搬、再生、処分等)されなければなりません。建設廃棄物の排出事業者は発注者から直接工事を請け負う元請業者です。従って、石綿を含む建設廃棄物の処理責任は元請業者にあります。
※1.これらの基準(環境省HP「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」)は廃棄物処理法において定められているほか、環境省の「石綿含有廃棄物等処理マニュアル」に基づいて処理することが必要です。
1.石綿含有廃棄物等とは
廃棄物処理法の石綿含有廃棄物等は、「工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの」と定義されており、飛散性のある廃石綿等と非飛散性の石綿含有廃棄物の2種類に区分されます。このうち廃石綿等については、特別管理産業廃棄物としてより厳しい管理が求められることになります。
廃石綿等(レベル1、2相当)
- 石綿含有吹付け材
- 石綿含有保温剤・断熱材・耐火被覆材
- 石綿建材除去作業において使用されたプラスチックシート、防塵マスク、作業衣等など
石綿含有廃棄物(レベル3相当)
- 石綿含有一般廃棄物・・日曜大工によって排出された石綿スレートなど
- 石綿含有産業廃棄物・・石綿を含むPタイル(廃プラスチック類)、石膏ボード(ガラスくず)、石綿スレート板(がれき類)、石綿含有仕上塗材が廃棄物になったもの(汚泥) など
石綿含有廃棄物等は、法律によって名称が異なります。法令別の名称の対応関係は以下のとおりです。
【参考】主な法令における石綿含有廃棄物等の名称(国交省アスベスト対策Q&Aを一部改編)
石綿含有吹付け材 | 石綿含有耐火被覆材石綿含有保温剤石綿含有断熱材 | その他の石綿含有建材(成形板など) | |
一般呼称 | レベル1 飛散性アスベスト | レベル2 飛散性アスベスト | レベル3 非飛散性アスベスト |
建築基準法 | 吹付け材の内、下記の2種類を規定・吹付けアスベスト・アスベスト含有吹付けロックウール | 対象外 | 対象外 |
大気汚染防止法 | 特定建築材料(※2) | 特定建築材料(※2) | 特定建築材料(※2) |
労働安全衛生法石綿障害予防規則 | 建築物等に吹き付けられた石綿等 | 石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等 | 石綿等 |
廃棄物処理法 | 廃石綿等特別管理産業廃棄物 | 廃石綿等特別管理産業廃棄物 | 石綿含有廃棄物 |
※2.特定建築材料の区分については、ブログ「建築物の解体等工事にかかわる石綿(アスベスト)規制について」を参照願います。
2.廃石綿等(特別管理産業廃棄物)の適正処理
管理体制
廃石綿等の排出事業者(元請業者)は、特別管理産業廃棄物管理責任者(特別管理産業廃棄物管理責任者の講習会修了者又は一定の実務経験者)を設置(※3)し、処理計画の策定や産業廃棄物管理票(マニフェスト)の管理などを 確実に行うよう管理体制の充実を図らなければなりません。
※3.自治体によっては、特別管理産業廃棄物管理責任者の届出が必要な場合があります。
建設工事現場における保管
- 保管基準
①周囲に囲いを設ける。
②見やすい箇所に掲示板を設ける(廃石綿等の保管場所である旨、責任者の氏名等を表示)。
③囲いの下端から勾配50%以下の高さにする。
④他の物が混入しないよう仕切りを設ける。
- 飛散防止措置
固形化、薬剤による安定化、湿潤化させる等の措置を講じた後、耐水性の材料で二重に梱包する等の飛散防止の措置を講じる。
- 容器等への表示
①個々の容器に廃石綿等であること
②取扱い上の注意事項
収集・運搬
- 飛散、流出させない
- 混合するおそれのないように、他の物と区分
- 原則、積替えを行わず、処分施設に直送する
- 運搬車に廃棄物収集運搬車両である旨の表示
- マニフェスト等の書面を備え付け
- 廃石綿等である旨、取り扱う際に注意すべき事項を記載した文書の携帯又は収納した運搬容器に表示
- 委託する場合、廃石綿等の許可を有する 特別管理産業廃棄物収集運搬業者に委託
- 処理を委託しようとする者に対し、事前に文書で通知
処分
- 廃石綿等の許可を有する特別管理産業廃棄物処分業者に委託
- マニフェストの交付・確認・保存(5年間)
3.石綿含有産業廃棄物の適正処理
管理体制
石綿含有産業廃棄物の排出事業者(元請業者)は、廃石綿等の管理体制に準じ、石綿含有産業廃棄物の管理体制を整備する必要があります。
建設現場における保管
- 保管基準
①周囲に囲いを設ける。
②見やすい箇所に掲示板を設ける(廃棄物の保管場所である旨、責任者の氏名等を表示)。
③囲いの下端から勾配50%以下の高さにする。
④他の物が混入しないよう仕切りを設ける。
- 飛散防止措置
①覆いを設ける、梱包する(荷重により変形又は破断しないよう整然と積み重ねる。シート掛け、梱包する等の対策を講ずる)
②石綿含有塗材は、確実な梱包を行なう。
- 容器等への表示(義務ではなく、望ましい)
①容器に石綿含有廃棄物であること
②取扱い上の注意事項
収集・運搬
- 飛散、流出させない
廃棄物を変形又は破断させない(原形のまま整然と積込み・荷卸し)
シート掛け、フレコンに詰める
破砕させない(パッカー車等へ投入しない)
石綿含有仕上塗材は二重こん包のまま運搬する
けい酸カルシウム板第1種(切断・破砕されたもの)等は、梱包して 廃棄物の露出がないようにする
- 混合するおそれのないように、他の物と区分
- 積替えは一定の条件下で可能
- 運搬車に廃棄物収集運搬車両である旨の表示
- マニフェスト等の書面を備え付け
- 委託する場合、廃棄物の種類に応じた 許可を有する産業廃棄物収集運搬業者に委託する
処分
- 石綿含有産業廃棄物の破砕処理が禁止されたため、破砕処理を行う処分業者へ処理を委託することはできない。
- 石綿含有産業廃棄物の処分方法は、埋立処分もしくは溶融処理、無害化処理のみとなる。
- マニフェストの交付・確認・保存(5年間)
- マニフェストの交付においては、「産業廃棄物の種類」欄の余白に「石綿含有産業廃棄物」 と記載し、他の廃棄物とは別に交付する。